愛知県保険医協会は、「保険証の廃止方針に抗議する」理事長声明を首相・厚労相・総務相・デジタル相あてに10月14日付で送付しました。
河野デジタル担当大臣は、紙やプラスチックの保険証を2024年秋にも廃止すると表明した。マイナンバーカードの交付率が依然として低い現状を打開する狙いといわれるが、命と健康に関わる医療を「人質」に取って、マイナンバーカード取得を実質義務化するような今回の表明に、断固として抗議する。
マイナンバーカードの交付率は人口比約5割、うち保険証利用の登録件数はカード所持者の4割という現状であり、多くの国民はマイナンバーカードによる保険証利用を希望していない。国民皆保険制度の我が国で、マイナンバーカードを一体化し保険証を原則廃止するのは、全国民にマイナンバーカード取得を強制するのに等しい。マイナンバーカードの取得は、本人が利便性と危険性を考えて決めるという番号法の申請主義に反する上に、憲法が求める基本的人権尊重にも反する。少なくとも、保険証は原則交付とし、マイナンバーカードを保険証として使うかどうかは個々の国民の任意とするべきである。
マイナンバーカードの保険証利用には、院内でのカード紛失・盗難やマイナンバー漏洩のリスクが高まる、院内でカードを拾得した場合、届出などで事務負担が生じることになり、コロナ禍で心身ともに疲弊した医療現場に、これ以上の負担を持ち込むべきではない。
また、政府はマイナンバーカード普及のメリットとして医療情報閲覧をあげているが、マイナ受付した患者のうち医療情報閲覧に同意した件数の割合(7月分)が、特定健診等情報16.7%、薬剤情報47.2%と少なく、医療情報等の閲覧には慎重な患者が多い現状である。
現行の保険証の目視による資格確認で、特段の支障がなく、なりすまし受診の横行なども報告されていない。
さらに、マイナンバーカードによる資格確認は、災害時の停電やシステム停止・故障時に支障をきたしかねない。
当協会の会員の医師・歯科医師からは、「保険証や診察券を紛失する人が時々いるため、マイナンバーカードに全ての個人情報を集約する危険性を感じます」「マイナンバーカードの電子証明書に有効期限があるため、更新せず受診した場合に窓口が大混乱する。保険証が患者さんにとっても簡便だ」「患者にマイナンバーカードを持ち歩かせることに反対」などの声が多く寄せられている。
国の各種審議会の議論をみると「負担能力に応じた負担を求める」ため、マイナンバーによって個人の金融資産や納税額、保険料等を紐付けて把握し、医療費の更なる自己負担を増やす狙いがあると考えられるが、そのようなことのために、保険証を原則廃止するというのは到底納得できない。また、個人情報を統制・監視することにもつながりかねず、容認できない。
保険証廃止の方針は、撤回するよう求める。