おたふくかぜ・帯状疱疹など助成が拡大
保険医協会地域医療部は、2022年4月1日時点での任意予防接種助成事業の実施状況を調査し、県下全市町村から回答を得た。その結果を報告する。
子どものインフルエンザ
子どものインフルエンザワクチンに対する助成については、岡崎市、江南市、稲沢市、清須市、弥富市、幸田町が新たに助成を開始した。県内で助成制度を実施している自治体は19市町村(県内自治体の35.2%)となり3分の1を超えた。
助成を行っている自治体のなかでは、助成対象を受験生のみとしている自治体(岡崎市、江南市、稲沢市、東海市、大府市、知多市、豊明市、南知多町、幸田町)がある一方、中学生までや高校生までなどすべての子どもを対象にしている自治体(安城市、清須市、弥富市、あま市、豊山町、蟹江町、飛島村、設楽町、東栄町、豊根村)も多い。
子どもの健康を守り、学級閉鎖や看病のために休まざるを得ない親の負担を減らすためにも、すべての自治体で広い範囲を対象にしたインフルエンザワクチンの助成制度が望まれる。
おたふくかぜ
おたふくかぜワクチンに対する助成については、稲沢市、東海市、大府市、豊明市が新たに助成を開始した。県内で助成制度を実施している自治体は22市町村(同40.7%)。2回の助成を行っている自治体も3市町(大府市、豊明市、東栄町)増え、8市町村となった。
おたふくかぜワクチンを巡っては、厚生労働省の予防接種・ワクチン分科会で定期接種化の検討が行われている。日本耳鼻咽喉科学会もおたふくの合併症による難聴児を減らすために定期接種化が必要としており、早急な定期接種化も求めたい。また、接種回数については、日本小児科学会が2回の接種が望ましいとしている。
協会では、国に対して早急な定期接種化を求めている。一方、子どもの難聴を防ぐためには定期接種化を待つことなく市町村独自の助成制度を一刻も早く設けることが重要であることから、市町村に対しても制度の創設と2回の助成を求めていく。
MRワクチン
MR(麻しん風しん混合)ワクチンは、定期接種化されており、1歳と小学校入学前の2回接種することとなっている。しかし、その期間に接種を漏らしてしまう方などがあることから、定期接種の期間以外でも市町村独自で助成を行っている自治体がある。今回の調査で、県内五市町で助成制度があることが分かった。
岡崎市では、①2~18歳で2回接種(年中児までは1回接種)していない方、②麻しん抗体検査で抗体価が充分でない方を対象に助成を行っている。
子どもの重症化リスクの高い麻しんや、妊婦が罹患すると先天性風しん症候群の子どもが生まれる可能性が高くなる風しんを予防するためにも、各市町村には定期接種以外の方への助成を求めたい。
帯状疱疹
帯状疱疹ワクチンの助成制度は2020年度に名古屋市が県内で初めて助成を開始した。今回の調査で、5市町村(蒲郡市、稲沢市、大府市、豊山町、飛島村)が新たに助成を開始し、助成を行っているのは7市町村となった。
名古屋市ではビケン接種で4,138円、シングリックス接種で17,138円(1回につき)の助成をしている。帯状疱疹ワクチンについては接種費用が高いことも、普及の障害になっていることから、名古屋市のように利用しやすい制度の創設を求めたい。
特別な理由による再接種費用補助
骨髄移植などにより、過去の予防接種で得た抗体を失った子どもに対しワクチンの再接種費用を助成する制度を行っているのは昨年5月以降4市町村増え、53市町村となり、未実施は東栄町のみである。協会が調査を開始した2018年には9市のみでの実施だったが飛躍的に前進している。
高齢者肺炎球菌ワクチン
高齢者用肺炎球菌ワクチンは2014年に定期接種化され、対象は65歳とされたが、経過措置として65歳以上で5歳刻み(上限100歳)の住民も対象となっている。国の経過措置は2018年度末で終了予定であったため、自治体独自の助成についても2018年度末で終了する自治体もあった。しかし、国は接種率が低いことを理由に経過措置を2023年度末まで延長している。
今回の調査で、津島市と飛島村が新たに助成を開始した。独自の助成を取りやめる自治体が増える傾向にあったなかでの新しい動きで歓迎したい。
肺炎による死亡の95%を70歳以上が占めていることからも高齢者の健康にとってワクチンの接種が重要であり、助成制度の再開・創設を求めたい。