(愛知県保険医新聞2022年7月5日号)
通院入院ともに大幅に拡大
保険医協会地域医療部は、2022年4月1日時点での「子ども医療費助成制度」の実施状況を調査し、県下全市町村にあたる54市町村から回答を得た。その結果を報告する。
県基準の引き上げ待ったなし
子ども医療費助成制度は、愛知県制度が通院で義務教育就学前まで窓口負担を無料にしているが、県内全自治体が県基準を超えて助成を行っている。入院の県制度は中学校卒業までを対象としているが、県内54自治体のうち45自治体(県内自治体の83%)が県基準を超えた助成を行っており、県基準の早急な引き上げが求められる。
通院 18歳年度末まで無料が3倍化
通院では、18歳年度末まで窓口負担無料で医療が受けられるのが昨年の7自治体から大幅に増え20自治体(同37.0%)となった。昨年5月以降に対象を拡大(予定も含む)したのは、名古屋市、蒲郡市、犬山市、江南市、小牧市、稲沢市、東海市、大府市、岩倉市、愛西市、弥富市、豊山町、扶桑町、蟹江町。このうち、大府市以外は、窓口負担無料となっている。大府市は中学校卒業後に1割の自己負担が残った。犬山市と愛西市は昨年度まであった中学校卒業後の1割の自己負担を撤廃した。
今回、愛知県内で通院の医療費を18歳年度末まで拡大する動きが大きく前進していることがはっきりした。協会ではこの調査結果をもとに未実施の自治体への働きかけを強めていく。
また、中学生に県内で唯一自己負担が残っている半田市には早急な無料化を強く求めたい。
入院 18歳年度末まで無料が8割に
入院では、18歳年度末まで窓口負担無料で医療が受けられるのが昨年の30自治体から43自治体(同79.6%)となった。昨年五月以降に対象を拡大(予定も含む)した自治体は13自治体。犬山市は昨年度まであった中学校卒業後の1割の自己負担を撤廃した。18歳年度末までの拡大を行っていない残る2割の自治体には早急な制度拡大を求めたい。
所得制限・自己負担は撤廃を
愛知県内では、18歳年度末までの拡大の際、多くの自治体が所得制限や自己負担を設けずに実施している。所得制限を設けているのは津島市と長久手市、自己負担を設けているのは半田市と大府市だ。
所得制限や自己負担は、受診抑制につながりかねない。親の所得によらず、すべての子どもが等しく医療を受けられるよう、これらの制限は撤廃すべきである。
働く若者に安心を
18歳年度末まで対象を拡大している自治体で、中学校卒業後の就労者を対象としているかどうかについても調査を行った。対象としている自治体は38自治体、対象としていない自治体は7自治体だった。
経験年数も浅く収入も多くはない若い労働者にとって、怪我や病気による医療費は大きな負担となる。すべての自治体で就労状況に関わらず助成が行われるよう求めて行く必要がある。
入・通院とも18歳年度末まで主流に
入院・通院ともに18歳年度末まで窓口負担無料で医療を受けられる自治体は、昨年5月以降13自治体増え、20自治体(同37%)と大きく前進した。子どもが病気や怪我をした時、お金を気にせず医療を受けられる環境が求められる。病気にかかりやすい乳幼児がいる家庭、ぜんそくやアトピーなど通院の回数が多い子どものいる家庭にとっては医療費が大きな負担となる。特に低所得の世帯にとって子どもの医療費窓口無料化は切実だ。親も子どもも安心して医療が受けられるよう医療費助成制度の充実は重要だ。
保険医協会は、愛知県基準の引き上げを求めるとともに、入院・通院ともに全自治体で18歳年度末まで自己負担無料で医療が受けられるように、今後も運動を続けていく。