2022年7月28日

産婦健診・新生児聴覚検査・高齢者補聴器助成

新生児聴覚検査の助成は8割を超える

保険医協会地域医療部は、2022年4月1日時点での産婦健診助成事業・新生児聴覚検査の助成事業等の実施状況を調査し、県内全市町村から回答を得た。その結果を報告する。

産婦健診

日本産婦人科医会によると、産後うつは産婦の10~15%前後に見られ、自殺や虐待、子どもの発達などに影響を及ぼす。産後うつの母親は本人からケアを求めることがほとんどないため、医療保健従事者側から積極的にスクリーニングして働きかける必要がある。
2017年に厚労省が産後うつの防止などを目的に産婦健康診査事業を創設し、全国でも産婦健診への助成を行う市町村が大きく広がった。愛知県では2019年からすべての市町村で産婦健診の助成を受けられるようになった。
今回の調査で、助成回数を2回としている自治体は3市町増え23市町村(県内自治体の42.6%)となった。産後うつは早期発見、早期治療が求められることから、産婦との接触の機会を増やすことが何よりも重要である。各自治体では産婦健診だけでなく様々な形で接触機会を増やす努力がされている。産婦健診には国が健診費用の2分の1を2回まで補助する制度があることから、すべての自治体に少なくとも2回の助成を求めたい。

新生児聴覚検査

先天性難聴の出現頻度は1000人に1~2人とされており、他の先天性疾患に比べて頻度が高いのが特徴である。両側難聴については、新生児聴覚検査を実施し、早く発見して補聴器を装用し、聞く力や話す力をつける練習を行うと、話をする力やコミュニケーション能力を高くすることができる。
今回の調査で新たに12市町が助成を開始したことが分かった。県内で助成を行っている自治体は45市町村(同83.3%)となり、昨年から大きく前進した。また、出産時に検査を受けられなかった場合に、何らかの方法でフォローをしている自治体が20市町村(助成実施市町村の44.4%)あることも分かった。
協会ではすべての新生児に新生児聴覚検査が実施され、聴覚障害の早期発見・早期療育につなげられるよう、制度の創設やきめ細かな制度実施を求めていく。

高齢者補聴器助成

加齢性難聴は日常生活、コミュニケーションを困難にすることから、うつ病や認知症の要因となることが指摘されている。
補聴器購入費の助成は、障害者手帳があれば、障害者総合支援法に基づく補装具費支給制度で受けることができる。しかし、障害者手帳の発行を受けられるのは、両耳の聴力が70デシベル以上の高度・重度難聴者に限られることから、軽度や中等度ではこの助成を受けることができない。そのため、日本では欧米諸国と比べて補聴器の使用率が極めて低くなっている。WHO(世界保健機関)では41デシベルの中等度難聴から補聴器使用を推奨しており、軽度や中等度への助成制度創設が求められている。
今回の調査で新たに稲沢市が助成を開始した。県内で助成制度がある自治体は3市町となった。
高額な補聴器に対する公的補助を求める声は多く、政府に公的補助制度創設を求める請願署名の取り組みなども各地で広がっている。協会では国や自治体に対して助成制度創設を求めていく。

注:表中のゴチックは前回調査(2021年4月)からの変更点。

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