歯科用貴金属価格随時改定(2022年6月5日号)

7月から302円引き上げ

 中医協は、5月18日の総会で、7月に行う随時改定で歯科用貴金属の告示価格を、現在の3,413円から3,715円(いずれも1gあたり)に引き上げることを決めた。
 随時改定は、診療報酬改定年の4月以外、年4回(1、4、7、10月)、素材金属の価格の変動幅が一定の水準を超えた場合に実施されていたが、4月の診療報酬改定からは、変動幅にかかわらず必ず行われるよう改定された。5月には、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を背景として金属、特に金銀パラジウム合金(金パラ)の組成・成分の20%を占めるパラジウムの価格急騰への対応として、緊急改定が行われた。
 今回7月の随時改定では、本来、今年1月から4月を対象とした平均素材価格を反映するはずだったが、5月の緊急改定で1月から3月の平均素材価格を反映したため、4月のみを対象として算出された。5月に入り、パラジウムの価格は落ち着いてきているが、4月は比較的高値で推移したため、今回は302円の引き上げとなった。
 4月、5月、7月の改定で、告示価格は市場価格に接近し、いわゆる「逆ざや」状態は解消しつつあるが、これまで歯科医療機関が負担してきた「逆ざや」=赤字分への補填は一切議論されていない。協会・保団連では、2019年11月に会員要請署名に取り組み、政府に「逆ざや」解消を求めてきたが、その後も厚労省・中医協などの動きは鈍く、医療機関が負担する「逆ざや」は拡大し続けてきた。
 告示価格の引き上げは、一方では患者負担の増加につながる。大臼歯FMCを例に挙げると、3月までは1,493点だったが、4月改定で1,562点、5月緊急改定で1,655点、7月改定で1,762点となった。4月改定前と比べ269点もの上昇となり、3割負担の患者では窓口での負担金が800円以上も引き上がり、5,000円を超えることとなる。現在は物価の上昇も顕著で、窓口負担金の大幅な上昇、高額な支払額は、患者の受診控えを招きかねない。
 患者窓口負担(割合)の引き下げや、歯科用貴金属に代わる材料の早期保険収載などの対応が求められる。

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