住民の健康を守るため積極的な取り組みを
保険医協会地域医療部は、2021年4月1日時点での「任意予防接種助成事業」の実施状況を調査し、県下全市町村にあたる54市町村から回答を得た。その結果を報告する。
子どものインフルエンザ
子どものインフルエンザワクチンに対する助成については、今回の調査で新たに弥富市と豊山町が実施することが分かった。一方、豊橋市と北名古屋市は制度を廃止した。そのため県内で助成制度を実施している自治体は14市町村(県内自治体の25.9%)と昨年と同数となった。
新たに助成を開始する弥富市と豊山町では中学生までを対象に1回あたり1,000円の助成を行う。
助成を行っている自治体のなかでは、助成対象を受験生のみとしている自治体(東海市、大府市、知多市、豊明市、南知多町)がある一方、中学生までや高校生までなど全ての子どもを対象にしている自治体(安城市、弥富市、あま市、豊山町、蟹江町、飛島村、設楽町、東栄町、豊根村)も多い。
子どもの健康を守り、学級閉鎖や看病のために休まざるを得ない親の負担を減らすためにも、すべての自治体で広い範囲を対象にしたインフルエンザワクチンの助成制度創設が望まれる。
おたふくかぜ
おたふくかぜワクチンは、18市町村(同33.3%)が助成を実施している。今年から飛島村が2回の助成を開始し、2回の助成を行っている自治体は5市村となった。
おたふくかぜワクチンを巡っては、厚生労働省の予防接種・ワクチン分科会で定期接種化の検討が行われている。また、日本耳鼻咽喉科学会の調査では2015・2016年の2年間で少なくとも348人がおたふくかぜの合併症による難聴と診断されていることから、学会として定期接種化を求めている。また、接種回数については、日本小児科学会が2回の接種が望ましいとしている。
国に対して早急に定期接種化するよう求めることが重要で協会としても要望していく。一方、子どもの難聴を防ぐためには定期接種化を待つことなく市町村独自の助成制度を一刻も早く設けることが重要であることから、市町村に対しても制度の創設と2回の助成を求めていく。
帯状疱疹
帯状疱疹ワクチンの助成制度は昨年度、県内では初めて名古屋市が助成を開始した。今回の調査で刈谷市が今年から制度を創設することが分かった。
帯状疱疹は加齢に伴い増加する傾向にあり、50歳を境に発症率が急激に上昇し、70歳以上での発生頻度は千人あたり10人以上となる。合併症や帯状疱疹後神経痛によって長期に渡って苦しむ患者が多いことからワクチンによる予防が重要である。
名古屋市では、ビケンの接種については4,138円の助成、シングリックスの接種については10,738円(1回につき)の助成を実施している。帯状疱疹ワクチンについては接種費用が高いことも障害になっていることから、名古屋市の制度のように利用しやすい制度の創設を求めたい。
特別な理由による再接種費用補助
骨髄移植などにより、過去の予防接種で得た抗体を失った子どもに対しワクチンの再接種費用を助成する制度を行っているのは、前回調査から五市村増え、四十九市町村(同90.7%)となった。協会が調査を開始した2018年には、9市のみでの実施だったが飛躍的に前進している。
国が定める子どもの定期予防接種は、規定の年齢や回数であれば公費で受けることができる。ただ、小児がん治療で骨髄移植などを受けると免疫が失われることがあり、ワクチンの再接種は自己負担となるため、全てを接種し直した場合、約20万円の費用がかかる。病気の治療に加え、さらなる経済的負担を軽減するためにも再接種費用の助成制度は重要だ。
まだ助成を実施していない5市町村には、早急に制度を創設するよう求めたい。
高齢者肺炎球菌ワクチン
高齢者用肺炎球菌ワクチンは2014年に定期接種化され、対象は65歳とされたが、経過措置として65歳以上で五歳刻み(上限100歳)の住民も対象となっている。国の経過措置が2018年度末で終了予定であったため、自治体独自の任意予防接種助成についても2018年度末で終了する自治体もあった。しかし、国は接種率が低いことを理由に経過措置を2023年度末まで延長した。
今年度は、実施状況の変化は見られなかったが、接種率が低いために経過措置が延長された経過からも助成を終了した自治体については助成の再開が求められる。