新生児聴覚検査の助成は半数超 産婦健診も拡大
保険医協会地域医療部は、2021年4月1日時点での「産婦健診助成事業」等の実施状況を調査し、県下全市町村にあたる54市町村から回答を得た。その結果を報告する。
産婦健診
日本産婦人科医会によると、産後のうつは10~15%前後に見られるもので、自殺や虐待、子どもの発達などに影響を及ぼす。産後うつ病の母親は本人からケアを求めることがないため、医療保健従事者側から積極的にスクリーニングして働きかける必要がある。
2017年に厚労省が産後うつの防止などを目的に産婦健康診査事業を創設し、その後産婦健診への助成を行う市町村が大きく広がった。愛知県でも2019年4四月からすべての市町村で産婦健診の助成を受けられるようになった。
今回の調査で、助成回数を2回としている自治体は四市町増え、20市町村(県内自治体の37.0%)となった。産後うつは早期発見、早期治療が必要で発見の機会を増やすことが何よりも重要だ。国の制度は健診費用の2分の1を2回まで補助するものであることから、すべての自治体に少なくとも2回の助成を求めたい。
産婦健診の助成対象となる医療機関については、昨年度まで弥富市が愛知県内の医療機関に限定していたが、今年度からは県内すべての自治体が全国どこで健診を受けても助成を受けることができるようになった。協会で要望していたことが県内すべての自治体で実現したことは高く評価できる。
新生児聴覚検査
先天性難聴の出現頻度は1,000人に1~2人とされており、他の先天性疾患に比べて頻度が高いのが特徴である。両側難聴については、新生児聴覚検査を実施し、早く発見して補聴器を装用し、聞く力や話す力をつける練習を行うと、話をする力やコミュニケーション能力を高くすることができる。
今回の調査で、新たに7市町が助成を開始したことが分かった。県内で助成を行っている自治体は33市町村(同61.1%)となり半数を大きく超えた。助成対象となる医療機関については、実施している自治体すべてで、全国どこで検査を受けても助成を受けることができる。
協会ではすべての新生児に新生児聴覚検査が実施され、聴覚障害の早期発見・早期療育につなげられるよう、制度の創設を訴えていく。
高齢者補聴器助成
加齢性難聴は日常生活、コミュニケーションを困難にすることから、うつや認知症の要因となる危険性も指摘されている。補聴器購入費の助成は、障害者手帳があれば、障害者総合支援法に基づく補装具費支給制度で受けることができる。しかし障害者手帳の発行を受けられるのは、両耳の聴力が70デシベル以上の高度・重度難聴者で、軽度や中等度ではこの助成を受けることができない。そのため、日本では欧米諸国と比べて補聴器の使用率が極めて低くなっている。WHO(世界保健機関)では四一デシベルの中等度難聴から補聴器使用を推奨しており、軽度や中等度への助成制度の創設が求められている。
今回の調査で犬山市が新たに助成を開始したほか、稲沢市も2021年度中に助成を開始する予定であることが分かった。県内で助成制度がある自治体は3市町となった。
高額な補聴器に対する公的補助を求める声は多く、政府に公的補助制度創設を求める請願署名の取り組みなども各地で広がっている。協会では国や自治体に対して助成制度創設を求めていく。
注:表中のゴチックは前回調査(2020年4月)からの変更点。