医療・福祉・介護などの拡充を求め、県内全市町村と懇談し要請する「愛知自治体キャラバン要請行動」が昨年10月に実施された。本号から懇談等を通じて明らかになった特徴点を紹介する。
要請項目~福祉医療制度~
○子どもの医療費無料制度を18歳年度末まで窓口無料で実施してください。また、入院時食事療養の標準負担額も助成対象としてください。
現在、愛知県としての子ども医療費助成制度は、通院で「義務教育就学前」、入院で「中学校卒業」まで現物給付(窓口負担無料)となっている。しかし、近年「子どものいのちや健康を守れ」「子育て世帯への支援拡充を」という声が広がるなかで、愛知県内全ての市町村が県基準を拡大して制度を実施している。
18歳年度末までの助成が大幅に拡大 入院で全市町村実施
県内全ての自治体が通院・入院とも中学校卒業まで窓口負担を無料とする助成を行うなかで、対象年齢を18歳年度末に拡大する動きが大きく前進している。
2023年10月以降に18歳年度末までの窓口負担無料を実施または実施予定の自治体は、通院で豊橋市などの20市町。入院では、一宮市などの5市町が新たに窓口負担無料を実施または実施予定である。入院の対象を24歳までとしているのは、みよし市などの5市町となった(下表参照)。
18歳年度末まで窓口負担無料で所得制限を導入せずに助成を行っている自治体は通院で47市町村(県内市町村の87%)。入院では54市町村(同100%)と大幅に拡大し、県内の全市町村で18歳年度末までの無料化が実現することとなった。これは長年地道に市町村へ働きかけてきた自治体キャラバンの大きな成果である。
通院で18歳年度末まで無料化を実施していない岡崎市、一宮市、西尾市、大府市、知立市、高浜市、あま市の7市には、速やかに無料化の実現を求めたい。
子ども医療費助成制度の拡大はキャラバンでも長年要望しているほか、保険医協会でも毎年、各市町村に要望しており、運動の成果として高く評価したい。
中学生の窓口負担はゼロに
県内で唯一、中学生の通院に一割の自己負担を導入していた半田市では、2025年4月に自己負担を廃止することとなった。
これにより県内で子ども医療費助成制度に自己負担を設けているのは、大府市のみとなった。大府市は、中学校卒業後18歳年度末まで1割の自己負担を設けている。大府市には、早急に自己負担を廃止することを求めたい。
なお、18歳年度末まで助成している自治体のうち、6市町村で中学校卒業後の就業者を助成対象外としている。就業者であっても助成の対象にするよう求めたい。また、入院時食事療養費まで助成対象としているのは、北名古屋市(一部助成)と東栄町(全額助成)に限定されている。全国では多くの自治体で、入院時食事療養費を助成対象とする動きが進んでおり、さらなる制度の拡充を求めたい。
県制度拡大で各自治体の後押しを
キャラバンの懇談のなかで、18歳年度末までへの助成拡大を躊躇する自治体の声もある。この背景には、愛知県の制度拡充に対する消極的な姿勢がある。愛知県は2008年に対象を拡大して以降、10年以上通院義務教育就学前まで、入院で中学校卒業までという基準に留まっている。また、2013年には、子ども医療費助成制度などの福祉医療制度に窓口負担や所得制限を導入する検討をした経緯もあり、自治体が助成拡大を躊躇する要因となっている。県制度が各自治体の水準から立ち遅れていることが、自治体の制度拡充に悪影響を与えている。
全国的には、助成対象が愛知県を上回る群馬県、鳥取県、沖縄県などもあり、特に群馬県、鳥取県では県制度として通院・入院とも18歳年度末まで、自己負担・所得制限なく窓口無料としている。
県内全ての自治体で、所得制限が撤廃された。このようなときに愛知県が所得制限導入を検討することは、子育て支援に逆行するものだ。県内の多くの自治体が18歳年度末までの助成に踏み出しているなかで、それを支えるためにも県制度の拡充は喫緊の課題である。
なお、子ども医療費助成制度については、本来、全ての子どもが受けられるように国の制度として行うべきものであることから、キャラバンでは、自治体に対して国へ制度の創設を求める意見書を提出することも要請している。
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※特に断りのない場合は、現物給付で実施。
※ゴチック:2023年10月以降の変更部分
※★印:18歳年度末まで自己負担・所得制限なしで実施(予定を含む)
※市町村名が:通院・入院とも18歳年度末まで自己負担・所得制限なしで実施
※◆印:自己負担あり(大府市)
※24歳年度末まで拡大している春日井市、豊田市、東海市、東郷町は、学生で税法上の被扶養者が対象となる。