4回目は、介護保険について、主な特徴を紹介する。
要請項目~安心できる介護保障(抜粋)
○介護保険料・利用料など
・介護保険料を引き下げてください。また、保険料段階を多段階に設定し、低所得段階の倍率を低く抑え、応能負担を強めてください。とりわけ、第一段階・第二段階は免除してください。
○基盤整備
・特別養護老人ホームや小規模多機能施設等、福祉系サービスを大幅に増やし、待機者の実態を把握し、早急に解消してください。
○高齢者福祉施策の充実
・中等度からの加齢性難聴者を対象とする補聴器購入助成制度を実施してください。また、早期発見するための無料検診事業を実施してください。
○障害者控除の認定
・介護保険のすべての要介護認定者または障害高齢者自立度A以上を障害者控除の対象としてください。
・すべての要介護認定者または障害高齢者自立度A以上の人に「障害者控除対象者認定書」を自動的に個別送付してください。
第9期介護保険事業計画
2024年4月から第9期介護保険事業計画(2024~2026年度)が始まった。愛知県内の平均保険料(基準額月額)は5,957円となり、第8期(2021~2023年度)から225円(3.9%)の引き上げとなった。県内で一番高いのは名古屋市の6,950円で3期連続トップとなった。一番低いのは今回500円引き下げた美浜町で4,600円である。
第8期保険料からの増減を見ると、29.5%増の豊山町が1,564円も引き上げた。率、額ともに最も高く、保険料額でも県内2位の6,864円である。
保険料を引き下げたのは14市町村(26%)、据え置いたのが6市町(11%)であるが、一方で34市町(63%)が引き上げとなった。介護保険がスタートした第1期(2000~2002年度)の平均保険料2,737円から2倍以上の保険料額となっているうえに、深刻な物価高となっている昨今において保険料は引き下げるべきである。
応能負担の強化を
加入者が無理なく払える保険料に近づけるために、所得に応じて保険料段階を多段階化すると共に、高所得層の保険料倍率を引き上げる・低所得者の保険料倍率を引き下げることで応能負担の機能を強めることを求めてきた。
2024年度、国の示す標準段階が9段階から13段階に変更となった。これにともない、高浜市が最大の20段階に、18段階を1市、17段階を5市が設けるなど、知多北部広域連合・東三河広域連合を含め、45市町村(83%)が、13段階をさらに上回る段階を新設した。標準段階・13段階の半田市、豊田市など9市町(17%)にもさらなる多段階設定を求めたい。
保険料の倍率では、低所得段階の倍率を最も低く設定しているのはみよし市で、第1段階を国基準の0.285倍に対して0.175倍、第2段階を国基準0.485倍に対して0.3倍、第3段階を国基準0.685倍に対して0.5倍に引き下げている点は評価できる。
基盤整備で特養待機者の解消を
愛知県内の特別養護老人ホーム(以下、「特養」と表記)など介護保険施設の基盤整備は極めて深刻な状況である。
総務省がまとめた「統計でみる都道府県のすがた2024」によると、愛知県内の特養の施設数は65歳以上高齢者人口対比で全国最下位が継続している。
特養の待機者数は、原則要介護3以上に制限された2015年の17,277人から徐々に減少してきたが、2024年調査では515人増え8,225人となった。ただ、要介護1、2の待機者を把握していない自治体が18市町村(33%)あることを考慮すると実際の待機者はさらに多いと思われる。なお、愛知県が3年に一度発表している待機者数は、老人保健施設など他施設に入居しながら待機している人を除外するなどの仕掛けをして、県内の要介護3以上の待機者を3,502人としているが、実態を反映しているとは到底言えない。
特養の待機者がわずかとはいえ再び増加の傾向にあるのに対して、第九期介護保険事業計画における整備目標では3年間で増やす定員はわずか308人分である。しかも市町村別にみると定員増ゼロかマイナスが36市町村(67%)にも及ぶ。
団塊の世代が75歳を超える2025年を経て2040年に向け、これから要介護者はさらに増え続け、家族介護力はいっそう低下することが予測されているにもかかわらず、この整備目標は余りにも少なく、危機的な状況といえる。
制度創設が進む 補聴器購入助成
中等度からの加齢性難聴者を対象とする補聴器助成制度の早期実施を求めた。県内では新たに10市町が助成を開始し、実施自治体が17市町(31%)に増えた。
2023年度の実施内容を見ると所得制限なし(課税世帯は半額助成)での実施が9市町に増え、大府市61人、豊明市40人、設楽町11人など利用実績が上がっている。助成額は上限5万円が2市町、3万円が11市町(他に小牧市35,266円)、2万円が3市となった。
65%の自治体が認定書を自動交付
障害者手帳の所持に関わらず、要介護認定者を市町村長が税法上の障害者と認めれば障害者控除を受けることができる。実際、名古屋市以外の53市町村(98%)が要介護認定者または障害高齢者自立度A以上を税法上の障害者控除の対象としている。
「認定書発行枚数(県合計)」は、要望を始めた2002年当時3,768枚であったが、毎年増え続け、直近では2022年の76,178枚から2023年は79,634枚へと大幅に増加している。
「要介護1以上または障害高齢者自立度A以上を障害者控除の対象」としているのは、新たに蒲郡市、田原市、豊根村が実施し、53市町村(98%)へと拡大し、未実施は名古屋市のみとなった。
「対象者(要介護認定者等)に認定書を自動送付」している市町村は、新たに新城市と東栄町が実施し、35市町村(65%)に拡大している。
障害者控除認定書発行の前進は、自治体キャラバンでの継続的な要請や地域住民の粘り強い働きかけ、自治体担当者の努力が生み出した貴重な成果だと言える。
未だ障害者控除対象者に「認定書」を自動送付していない市町村は、保険者が持つ要介護認定のデータをもとに、自動送付するように求めたい。
また、要介護認定者に対する認定書の発行割合が県内最低水準(1.5%)の名古屋市は、他のすべての市町村が認めている「要介護認定者または高齢障害者自立度ランクA」を直ちに対象とし、65%の市町村が実施している「認定書の自動送付」を求めたい。
