3回目は、国民健康保険について、主な特徴を紹介する。
要請項目~国民健康保険
(1)保険料(税)の引き下げ
①保険料(税)の引き上げを行わず、払える保険料(税)に引き下げてください。
②前年度までに積み立てられた基金や剰余金は保険料(税)の引き下げに使ってください。
(2)保険料(税)の減免制度
①低所得世帯のための保険料(税)の減免制度を実施・拡充してください。
②18歳までの子どもに均等割保険料(税)の減免制度を実施・拡充してください。
(3)保険料(税)滞納者に対して医療機関の窓口で医療費の10割負担を課す制裁措置を行わないでください。
(4)保険証の新規発行を停止する2024年12月2日以降も、資格確認書は自動的に発行してください。
被用者保険と比べ高い国保料(税)
所得に占める保険料割合(2021年)は、国保9.6%、協会けんぽ7.2%、健保組合5.7%、共済組合5.6%となっており、国保の負担の高さが際立っている。
例えば、給与収入400万円の30代夫婦と小学生2人の4人世帯の保険料(2024年度)は、協会けんぽ20万円に対し、名古屋市国保42万円と2倍を超える差となっている。
国保の保険料が耐え難い負担となった最大の原因は、1984年に国保への国庫負担金を削減した制度改悪にある。そのため、同時期の平均保険料は39,000円から93,000円へと大幅に引き上がっている。
また、市町村が愛知県に納める納付金が直近3年間で1人当たり約3万円も引き上がったことの影響も大きい。
国保料(税)を 引き下げるために
国保料(税)を引き下げるために、①国庫負担金の増額、②県の独自補助の拡充、③市町村の一般会計からの法定外繰入の拡大、基金・剰余金の活用、の3つの対応を求めたい。
このうち最も影響が大きいのが、①国庫負担金の増額である。全国知事会が厚労省に「国保料(税)を協会けんぽ並みの保険料にするための必要額」を質したところ、厚労省は「約1兆円の公費投入が必要」と答えている。1兆円の公費の投入で、均等割・平等割保険料を廃止し、協会けんぽ並みの保険料にできるので、県・市町村と共同して、国保への一兆円の公費投入を求めたい。
②市町村が愛知県に納める国保の1人当たりの平均納付金額は、この3年間で約3万円(22.6%)も引き上げられた。
2018年度から、県は市町村とともに国保の保険者となって、財政運営の責任主体を担っており、県の一般会計から国保会計への繰り入れで、納付金の大幅な引き下げが求められる。
③県内市町村の2024年の1人当たり平均保険料(税)は、47市町村(87%)が一斉に値上げしている。
愛知県に納める納付金が、大幅に引き上げられたとはいえ、市町村には一般会計からの法定外繰入の拡大と、国保会計に積み立てられた基金・剰余金の活用で、保険料の引き上げを抑えることを求めたい。
また、国保会計に積み立てられた基金・剰余金の活用では、2023年度の基金・剰余金は、愛知県合計で223億円(1人当たり17,831円)積み立てられている。市町村別に見ると、基金保有額と剰余金の1人当たり合計が5万円を超えるのが8市町村(15%)、3万円超5万円以下が12市町村(22%)ある。
積み立てられた基金・剰余金は、保険料(税)の引き下げと減免制度の実施・拡充に優先的に活用するよう求めたい。

18歳までの子どもの均等割の減免を
キャラバン要請で「被用者保険では、扶養家族が増えても保険料は増えないが、国保では生まれたばかりの赤ちゃんにも保険料がかかる」と繰り返し指摘し、子どもの均等割保険料の廃止を求めてきた。全国知事会など地方団体からも毎年要望が出され、国は、2022年度から就学前の子どもの均等割保険料の5割軽減が実現した。
しかし、国の減免対象は就学前に限定し、半額減額に留まっており、18歳まで全額免除の制度への改善に向け、全国知事会・市長会なども対象年齢や減額割合の拡大を求めている。
子どもの均等割保険料減免を実施した自治体の経験では、18歳未満の保険料を減免したことで、従来低かった多子世帯の収納率が顕著に向上する結果が得られている。
全国的には、厚労省の調査で、子どもに対して何らかの保険料減免を実施する保険者が118あることが明らかになっている(2022年8月現在)。
県内では大府市が、一般会計に「子ども子育て応援基金」を設け、18歳までの子どもの均等割保険料の9割減免に踏み切っている。
また県外では、18歳までの均等割保険料相当額を子育て応援金等として一般会計から支給し、実質的に均等割保険料をゼロとする自治体があり、注目できる。
引き続き、国に対し18歳までへの対象拡大と全額免除を求めるとともに、愛知県および市町村に対し国制度に上乗せする独自減免の実施を求めたい。
特別療養費の支給を発動させない
2024年12月2日からの健康保険証の新規発行停止と同時に、保険料滞納世帯へのペナルティとして発行してきた「短期保険証」と「資格証明書」が廃止された。
ただし、「資格証明書」は廃止されたが、それに代えて長期保険料滞納世帯に医療機関窓口で医療費10割負担を課す仕組みは、「特別療養費の支給」という形でそのまま温存された。マイナ保険証または資格確認書に「特別療養費(医療費10割負担)の対象者」である旨が表示されることとなる。医療費の10割負担を課す制裁措置「特別療養費の支給」の発動ゼロを求めたい。
「短期保険証」の廃止に伴い、他県では計画的に分割納付している世帯にまで、1年を経過した滞納が残っている世帯に「特別療養費」の対象となることを通知して納付を迫る動きが生まれており、注意が必要である。
滞納者への差押え
滞納世帯数は、2023年6月1日の72,807世帯から2024年6月1日は59,958世帯へと12,849世帯減少した。
一方、差押え件数は、2022年度19,885件から2023年度22,161件に2,276件増加している。
特に名古屋市は、財産調査の電子化により、調査件数が2022年度約38万件が2023年度約45万件へと飛躍的に増加し、連動して差押え件数が2022年度5,759件から2023年度7,263件へと26%も増えている。

全加入者へ資格確認書の発行を
国は健康保険証のマイナンバーカードへの一本化を進めており、2024年12月2日以降、従来の健康保険証の新規発行を停止した。今後、マイナ保険証を持っていない国保加入者には順次資格確認書が交付されることとなる。
国保加入者への資格確認書の交付は各自治体が行うこととなるが、漏れなく交付ができるかという点について担当者から不安の声も出された。自治体のなかには全国保加入者に資格確認書を交付する予定の自治体もある。各自治体がマイナ保険証を持っていない人を正確に把握することは困難なことから、全加入者への資格確認書の交付についても検討を求めたい。
なお、懇談を行った10月下旬は、マイナ保険証の登録解除が始まる直前であったことから、その対応について多くの自治体担当者から不安の声が出された。マイナ保険証を巡っては国が短期間で強引に推進したことで様々な弊害をもたらしているが、自治体の担当者にも大きな負担となっていることが改めて示された。拙速なマイナ保険証への一本化の見直しが求められる。