2021年5月16日

第8期介護保険事業計画(介護保険料)

介護保険制度は3年に1度見直しを行うこととなっており、2021年はその見直しの年にあたる。各自治体が2021年度から2023年度まで(第八期)の介護事業計画を策定し、4月から運用されている。介護事業計画は、今後3年間の介護保険サービスや在宅医療提供体制の整備などを規定するほか、介護保険サービスの種類や利用者数の推計なども行い、自治体ごとの保険料もこのなかで決められている。

介護保険料のアンケートを実施

協会地域医療部では、県内全市町村に対して、第8期介護保険料基準額および介護保険料段階数のアンケートを実施し、すべての市町村(2広域連合を含む)から回答を得た。

第7期から保険料を引き上げたのは34市町(県内自治体の63.0%)、据え置きは15市町村(同27.8%)、引き下げは5市町村(同9.3%)だった(表1参照)。第6期から第7期では40市町村が保険料を引き上げており、それと比較すると引き上げを行った自治体は若干減少したものの、全体として引き上げの傾向を脱することはできていない。また、引き下げをした自治体のうち4市町村は第8期から東三河広域連合が保険料を統一し、広域連合内で保険料が平準化されたことに伴うものである。

自治体ごとの保険料額を見ると、前期に続いて名古屋市が6,642円と県内で最も高い。保険料の引き上げ率では、前期比で14.6%引き上げた清須市が最も高い。清須市は前期からの引き上げ金額も758円と県内で最も多くなっている。

今回、据え置きをした自治体が増加した背景には、介護保険の利用が自治体の当初の予想を下回っていることがあげられる。第7期は集めた保険料を大幅に下回る利用状況となった自治体も多い。利用料を払うことが困難で利用を控える事例が多いことに加え、新しく施設を整備しても人材不足によって定数通りの受け入れができないという事態も散見される。さらに新型コロナ流行による利用控えが追い打ちをかけており、保険があっても利用しづらい介護保険の問題を浮き彫りにしている。

多段階化進む

協会では、介護保険料段階を多段階化し、低所得者の保険料率を引き下げて、高額所得者の保険料率を引き上げることで応能負担を強めることを求めてきた。

第8期では前期より段階を増やしたのは12市町と知多北部広域連合。県内で最大となる17段階は津島市と高浜市、最少となる10段階は北名古屋市と豊山町で、10段階の自治体は前期から4自治体減少した(表2参照)。
所得段階のうち最も低い第1段階を国基準(保険料基準額の0.3倍)より低く設定しているのは18市町、第2段階(同0.5倍)は25市町、第3段階(同0.7倍)は15市町となっている(表3参照)。
多段階化と低所得者への軽減が進んでいることは協会の要望が一定実現したこととして評価できる。

介護保険は財政の基本的な問題として、国や自治体、被保険者の負担割合を固定しているため、支出が増えると被保険者の保険料も増えるという構造的な問題がある。協会では、今後もこの仕組みの見直しを国に求めていくとともに、市町村に対しては、独自の努力で保険料の引き下げや減免措置の拡充、多段階化による応能負担の強化などをさらに進めるよう求めていく。

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