国民健康保険
要請項目~「国保の改善について」(抜粋)~
(1)保険料(税)の引き上げを行わず、払える保険料(税)に引き下げてください。
(2)保険料(税)の減免制度
①低所得世帯のための保険料(税)の減免制度を一般会計からの法定外繰入で実施・拡充してください。
②十八歳までの子どもは、子育て支援の観点から均等割の対象とせず、当面、一般会計からの法定外繰入で減免制度を実施・拡充してください。
(3)資格証明書の発行は止めてください。
高い国保料(税)国庫負担増額を
所得に占める保険料割合(2020年)は、国保10.0%、協会けんぽ7.5%、健保組合5.8%となっており、国保の負担の高さが際立っている。
例えば30代夫婦と小学生2人の4人世帯の保険料(2022年度)は、愛知県の協会けんぽが20万円に対し、名古屋市国保が35万円と2倍近い差となっている。
国保の保険料が耐え難い負担となった最大の原因は、1984年に国保への国庫負担金を削減した制度改悪にある。改悪前の国保財政に占める国庫支出金割合は約5割だったが、今では37%に減少している。そのため、同時期の平均保険料は39,000円から91,000円へと大幅に引き上がっている。
国保料(税)を引き下げるには、①国庫負担金の増額、②都道府県の独自補助の拡充、③市町村の一般会計からの法定外繰入の拡大、④国保会計に積み立てられた基金・剰余金の活用、の4つの対応が想定される。そのうち、何よりも求められるのは、国庫負担の増額である。
全国知事会は、国保の構造的な問題を解決するために、国に1兆円の公費投入の必要性を訴えている。1兆円の公費を投入すれば、人頭割ともいうべき均等割・平等割保険料を廃止し、協会けんぽ並みの保険料にすることができる。
均等割が廃止されれば、生まれたばかりの子どもにまで保険料がかかる矛盾も解消できる。
県・市町村と共同して、国保への国庫負担の増額を強く求めたい。
愛知県独自の補助も必要
愛知県は、かつて県独自に28億円の補助を実施していたが、2013年度限りで廃止した。少なくとも、医療費助成制度(福祉医療制度)の実施に伴う国庫負担金の減額分については県が応分の負担をすべきものである。子ども・障害者・ひとり親家庭などの福祉医療制度は、愛知県と市町村の共同事業であり、減額されている約29億円について、緊急に2分の1の負担を求めたい。
市町村は法定外繰入と基金・繰越金活用を
市町村には一般会計からの法定外繰入の拡大、国保会計に積み立てた基金・剰余金の活用を提案した。
国保会計に積み立てられた2020年度の基金・剰余金は、愛知県合計で、基金保有額が175億円(1人当たり12,269円)、剰余金(次年度繰越金)が142億円(1人当たり9,947円)積み立てられている。市町村別に見ると、基金保有額と剰余金の1人当たり合計が50,000円を超えるのが12市町村(22%)、30,000円を超えるのが28市町村(52%)ある。
積み立てられた基金・剰余金は、保険料(税)の引き下げと減免制度に優先的に活用することを求めたい。
低所得世帯の保険料減免は有効な施策
低所得世帯向けの保険料減免制度は、極めて有効な施策である。県内の市町村では、25市町村(46%)が低所得減免を実施している。とりわけ、国の法定減額(7割・5割・2割)世帯などを対象に、数千~数万世帯に独自減免を実施している市町村も少なくない。
県外のS市では、所得100万円超200万円以下の世帯の収納率が低いことに着目し、2014年度に低所得者向けの3割減免を導入したところ、収納率が2013年度85%から2019年度94%に向上している。また、同市では2018年度に18歳未満の均等割を3割減免したところ、従来低かった4人以上世帯の収納率も向上した。保険料(税)の納入が困難で、収納率の低い(滞納者が多い)世帯を対象とした減免制度の実施が、収納率の向上に寄与したものである。
資格証明書交付は3市まで減少
保険料(税)滞納が長期にわたると、正規の保険証を取り上げられ、全額窓口負担で償還払いとなる資格証明書が交付される仕組みがあるが、自治体キャラバンでは、医療受診の機会を奪うものとして資格証明書を交付しないよう求め続けてきた。その結果、県内で資格証明書を発行している自治体は、2022年6月1日現在5市(一宮市・半田市・豊川市・稲沢市・岩倉市)まで減少し、このうち一宮市と稲沢市は2022年10月までに発行を中止した。依然として発行を続けている3市についても正規の保険証で安心して受診できるよう改善を求めたい。
名古屋市は、2020年9月以降、資格証明書を発行しない取り扱いを続けている。その理由を「資格証明書交付を目的化して滞納整理の進捗が見られない案件が散見されることや、他都市においても資格証明書によらない滞納整理に舵を切る事例が見られることを踏まえ、原則として全ての滞納世帯に短期保険証を交付する」と説明している。こうした経験を広げていくことが重要である。