2023年2月10日

子ども医療費助成制度

医療・福祉・介護などの拡充を求め、県内全市町村と懇談し要請する「愛知自治体キャラバン要請行動」が昨年10月実施された。本号から懇談等を通じて明らかになった特徴点を紹介する。

要請項目~福祉医療制度~

○子どもの医療費無料制度を18歳年度末まで窓口無料で実施してください。また、入院時食事療養の標準負担額も助成対象としてください。

現在、愛知県としての子ども医療費助成制度は、通院で「義務教育就学前」、入院で「中学校卒業」まで現物給付(窓口負担無料)となっている。しかし、近年「子どものいのちや健康を守れ」「子育て世帯への支援拡充を」という声が広がるなかで、愛知県内全ての市町村が県基準を拡大して制度を実施している。

18歳年度末までの助成が大幅に拡大

県内ほとんどの自治体が通院・入院とも中学校卒業まで窓口負担を無料とする助成を行うなかで、対象年齢を18歳年度末に拡大する動きが大きく前進している。
2021年10月以降に18歳年度末までの窓口負担無料を実施または実施予定の自治体は、通院で名古屋市、春日井市、津島市、蒲郡市、犬山市、江南市、小牧市、稲沢市、東海市、尾張旭市、岩倉市、愛西市、清須市、弥富市、大口町、扶桑町、武豊町、幸田町の18市町。犬山市と愛西市は中学校卒業以降にあった1割の自己負担を撤廃し窓口負担が無料になった。津島市は、中学校卒業以降にあった所得制限を撤廃し、18歳年度末までの全ての子どもが対象となった。なお、大府市も18歳年度末までの対象年齢拡大を行ったが、中学校卒業以降には1割の自己負担が設けられたため、窓口負担無料の制度とはなっていない。
入院では、津島市、碧南市、西尾市、犬山市、江南市、大府市、知多市、岩倉市、豊明市、弥富市、あま市、扶桑町、武豊町の13市町が新たに窓口負担無料を実施または実施予定である。東郷町は対象年齢を拡大し、24歳年度末まで(18歳年度末以降は学生に限る)となった。県内で24歳まで対象としているのは、春日井市、豊田市、東海市と合わせて4市町となった。長久手市は中学校卒業以降にあった所得制限を撤廃し、18歳年度末までの全ての子どもが対象となった。
18歳年度末まで窓口負担無料で所得制限を導入せずに助成を行っている自治体は通院で27市町村(県内市町村の50%)、入院では47市町村(同87%)と大幅に拡大している。子ども医療費助成制度の拡大はキャラバンでも長年要望しているほか、保険医協会でも毎年、各市町村に要望しており、運動の成果として高く評価したい。

中学生に自己負担は半田市のみ

通院について少なくとも中学校卒業まで窓口負担無料としている自治体は53市町村(同98%)。県内の自治体で中学生に自己負担があるのは半田市のみ(中学生以上は1割の自己負担あり)である。半田市には一刻も早く中学生の自己負担を撤廃するよう強く求めたい。あわせて、急速に拡大している18歳年度末までの助成をさらに進めることが重要だ。制度の拡充にあたっては、所得制限や一部負担などを導入させないことも留意したい。所得制限のあった津島市と長久手市、一部負担のあった犬山市と愛西市がその撤廃に踏み切ったことは運動の成果だ。これにより、県内全ての自治体で所得制限が撤廃された。一部負担のある半田市、大府市にはその撤廃を引き続き求めていく。
なお、18歳年度末まで助成している自治体のうち、6市町村で中学校卒業後の就業者を助成対象外としている。就業者のなかには、金銭的な事情などから進学を断念した例もあり、就業者であっても助成の対象にするよう求めたい。

県制度の拡大が 求められる

キャラバンの懇談のなかで、18歳年度末までへの助成拡大を躊躇する自治体の声もある。この背景には、愛知県の制度拡充に対する消極的な姿勢がある。愛知県は2008年に対象を拡大して以降、10年以上通院義務教育就学前まで、入院で中学校卒業までという基準に留まっている。また、2013年には、子ども医療費助成制度などの福祉医療制度に一部負担や所得制限を導入する検討をした経緯もあり、自治体が拡大を躊躇する要因となっている。今年度から県内全ての自治体で、所得制限が撤廃された。このようなときに愛知県が所得制限導入を検討することは、子育て支援に逆行するものだ。県内の多くの自治体が18歳年度末までの助成に踏み出しているなかで、それを支えるためにも県制度の拡充は喫緊の課題である。
なお、子ども医療費助成制度については、本来、全ての子どもが受けられるように国の制度として行うべきものであることから、キャラバンでは、自治体に対して国へ制度の創設を求める意見書を提出することも要請している。

愛知県子ども医療費助成制度実施状況一覧(2022)

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