保険医協会は、オンライン資格確認システム導入「義務化」撤回を求め運動を進めています。その運動の先頭に立って奮闘している杉藤庄平税経部長に聞きました。今回から3回にわたり掲載します。
■システム導入「義務化」を療養担当規則で強制することについてどのようにお考えですか。
そもそも療養担当規則とは、医療機関や医師が、適正に医療を提供できるように手順や方針、してはならないことを決めたものです。それにより患者さんは、どこの医療機関でも同質な医療サービスを受けることができるのです。ですから、オンライン資格確認を療養担当規則に収載することには違和感を覚えます。特にマイナンバーカードを使ったオンライン資格確認は、窓口で様々なトラブルを起こすことが考えられ、適正な医療の提供を損なう可能性があると思います。
■中医協の答申の附帯意見には、年末の導入状況を調査して必要な対応を検討することが付記されました。この背景について、どのようにお考えですか。
中医協としても、来年4月からのオンライン資格確認システム導入「義務化」を厳格に実施したいという思いはあるのだと思いますが、9カ月足らずの時間で対象すべての医療機関が対応できるかは疑問に思っているのではないでしょうか。ですから「義務化」撤回を求める必要があるし、少なくとも実施時期の延長や「義務化」の除外対象を拡大させるなどの抜本的な見直しが必要です。
■オンライン資格確認システム導入で便利になることもあるそうですが、先生はどのような点で「義務化」に反対なのですか。
日本中の医療機関の窓口がすべてIT化しているわけではありません。ネットに繋がずオフラインでレセコン、カルテコンを使っている所も多いのだと思います。確かに42.9万円を上限に補助金が出ますが、いちからネット回線を繋ぎプロバイダ契約をしたり、オンライン資格確認システムと繋げない医療機関ではコンピュータから買い替えたりしなければならないかもしれません。膨大な出費を強いられる医療機関が出てくると思います。その費用の担保が無い状態で、対象すべての医療機関に「義務化」を強いることには納得がいきません。
■協会には、システム導入「義務化」を機に「閉院を早めることを検討している」との問い合わせがきています。先生はどのようにお考えですか。
やはり高齢の先生などで、あと数年後に閉院を考えられている方は、費用などを考えれば、この際に閉院をしてしまおうかと考えるのは当然だと思います。協会の会員アンケートでも12%の先生が「義務化されると廃業」と回答しています。これは問題です。第三者承継を考える時間も、少しずつ患者さんへ周知しながら閉院の準備をする時間もありません。多くの医療機関が、一度に閉院してしまうと、地域医療の崩壊を招きかねません。
システム導入「義務化」は問題です。地域医療を支えるすべての医療機関を誰一人取り残さないために、先生も是非、この運動にご参加お願いします。
(つづく)
(愛知保険医新聞2022年10月5号掲載)