2021年2月18日

新型コロナ対策-地域医療守る使命感に応える施策を

(愛知保険医新聞2021年2月15日号)

新型コロナウイルス感染症対策の緊急事態宣言は延長された。
感染者が急増し病床逼迫の状況を招いた要因の一つに、政府の医療機関への財政支援が全く足りないことがあげられよう。医療機関を対象にした政府の交付金で3.2兆円の支援をしているというが、実際には3分の1も現場に届いていない。1月に実施した保険医協会の新型コロナの影響を尋ねた会員緊急アンケートで、感染防止対策等支援金は依然として3割が「未申請」「申請書作成中」で受け取りに至っていないことが象徴している。開業医を始め第一線医療を担う医療機関は、相互の連携をしつつ地域医療を支えている。診療報酬で新型コロナ患者受け入れ病院には評価があるものの、一般医療機関には極めて手立てが乏しい現状で、医院経営への不安の声は増加している。
全ての医療従事者を対象に改めて慰労金を支給すること、感染防止対策等支援金を倍増し継続することや、昨年4月以前の実績を踏まえた診療報酬の概算払いなど、医療機関全体に届く迅速な支援が急務である。
診療・検査医療機関をはじめ発熱患者の受け入れを行っている医療機関では、医師・スタッフの疲労が蓄積している。現場では地域医療を守るため、使命感を持って懸命の取り組みが続いているが、前述の協会緊急アンケートでは「COVID―19に関われば関わるほど、一般の患者さんの足が遠のいていく」「時間内には終わらず、プロテクティング、検査、患者への説明に時間がかかり、その間看護師、事務員の勤務超過となり人的・金銭的負担が大きい」など、支援の不充分さから心理的にも経済的にも厳しい状況になっている。こうした実態に対応する支援策が必要だ。
これに加えて、新型インフルエンザ特措法・感染症法改正によって新型コロナ患者受け入れ要請に応じない民間医療機関に名前の公表という社会的制裁を行うことは、急性期病床の削減、診療報酬の引き下げなど長年の社会保障抑制政策の失敗を不問にして、それに苦しめられた医療機関に責任を押しつけるもので筋違いも甚だしい。
さらに、感染症法改正では、当初案から刑事罰が削除され行政罰に修正されたが、一般的な行政罰の過料が5万円以下とされているのに対し、30万円や50万円の過料で実質的に刑事罰と同じ重みを持つ。過料の判定に人員逼迫の保健所職員がかり出されることも問題である。

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