(愛知保険医新聞2018年3月15日号)
1月26日、社会保障審議会介護給付費分科会で2018年度介護報酬改定案が了承され、改定率はプラス0.54%の微増となった。財務省の強力な引き下げ圧力にも関わらず微増となったことは、危機的水準と言われる事業所やサービスを抑制されている利用者の悲痛な声を反映した結果と言える。しかし、2015年改定時の2.27%という大幅引き下げにより事業継続に苦慮している事業所の窮状を解決するにはほど遠い水準と言わざるを得ない。
今回の改定は、「団塊の世代が75歳以上となる2025年に向け、状態に応じた適切なサービスを受けられるよう、質が高く効率的な提供体制の整備を推進する」とされ、(1)地域包括ケアシステムの推進、(2)自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現、(3)多様な人材の確保と生産性の向上、(4)介護サービス適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保の4点を方針に実施された。
今回重要視されたのが、「(2)自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現」だが、その実現の手段としてリハビリや訪問介護に対するアウトカム評価の対象拡大が盛り込まれた。しかし、訪問介護のケアマネへの介入や通所リハの生活行為向上リハビリテーション減算の対象者拡大などは、財政誘導により事業所に利用者を峻別させかねず、個人に必要なサービスを提供するという介護保険本来の趣旨に反する。
また訪問・通所リハの「リハビリテーションマネジメント加算」や特養と配置医師の連携強化など、医師による介護保険への一層の関わりを求めている。医療・介護との連携や多職種との協働は重要なことだが、医療でも診療以外に様々な書類作成が求められ学校健診や会議に参加している医師が、これ以上の負担に耐えることができるのか疑問だ。
現在議論されている第七期愛知県高齢者健康福祉計画でも在宅医療介護提供体制や認知症患者対策の充実が指摘されている。しかし政府が平均1万円引き上げるとし昨年拡充した「処遇改善加算」は、現場の職員の報酬に充分反映されておらず、各地の施設で人手不足による受け入れ制限も依然として続いている。
介護報酬は国民が受ける介護の質と量を規定するものである。加算による評価ではなく国庫負担を拡充し、医師・歯科医師を含む介護職員が安心して働きサービスを提供できるよう報酬全体を引き上げることが求められている。