改定率決定に向け議論もヤマ場に
2022年診療報酬改定に向けて、財務省財政制度等審議会は12月3日、年末の予算編成に向けて、「本体のマイナス改定なしに医療費適正化は図れない」とする建議を財務相に提出した。この間の中医協では医療経済実態調査の結果報告や、診療側・支払側からの改定に対する意見提出などが行われ、改定率の決定に向け重要な時期を迎えている。以下に、外来にかかわる内容を中心に主な内容を報告する。
2020年度は医療機関の損益差額が大きく減少
11月24日の中医協には「医療経済実態調査」の結果が報告された。2019年度と2020年度の医業・介護損益差額の比較が示され、2020年度は前年度に比べて損益差額が大きく下がっていることが明らかとなった。病院全体としては損益差額が前年度のマイナス3.1%からマイナス6.9%へと大きく減少。補助金を含めてかろうじて黒字という結果であった。また一般診療所では損益差額は黒字となったが、2019年度との比較で、補助金を含めてもコロナ感染症の診療・検査医療機関の診療所(医療法人)の黒字幅は前年度の5.6%から約半分の3.0%に縮小。診療・検査医療機関以外の診療所も6.9%から4.8%に減少した。
コロナの診療報酬特例は4月以降も継続の方向
11月26日の中医協には、訪問看護ステーションの加算の在り方、外来・在宅・リハビリ等の診療データの提出などについて議論がされた。診療データの提出については、厚労省が医療機関に外来・在宅・リハビリ・投薬・処置・検査のデータを提出させることを提案したが、診療側からは、データ提出は医療機関の負担が大きく、実態を無視した要件化に反対との意見とともに、協力可能な医療機関に対する適切な評価の必要性が訴えられた。一方支払側からはデータ提出は極めて重要だとして、多くの医療機関で協力してもらえる仕組みづくりやデータ活用に向けた検討の要望が出された。
12月3日には、個別事項として医療技術評価、医療安全対策、慢性維持透析の評価、コロナ特例や感染防止対策加算の議題の他、薬価調査・材料価格調査結果の速報値、医療経済実態調査結果に対する診療側、支払側の見解などについて報告された。個別事項では、昨今の主治医による検査結果レポートの確認不足の問題が取り上げられ、確認徹底に向けた体制強化への評価を求める診療側委員に対して、確認は当たり前とする支払側委員の間で議論が対立した。透析医療では有床診での透析評価の充実が議題となり、診療側の委員から有床診の危機的状況が訴えられ、評価を充実する要望が出された。
コロナの診療報酬特例の継続については、支払側委員からも強い反対意見は出されず、概ね継続する方向で一致。診療側からは、九月末で廃止された初診・再診料に係る外来特例について、感染症対策を点数上も見える形で評価してほしいとの意見や、地域で日常的にネットワークを構築して感染防止対策対応を進めている体制を重視した評価を求める意見も出された。
2021年の薬価調査及び材料価格調査の速報値については、薬価の平均乖離率が7.6%、特定保険医療材料価格では3.8%との報告があった。最後に、医療経済実態調査結果について支払側、診療側から見解が示され、補助金を含めば黒字とする支払側と、補助金含めても病院はギリギリ黒字、診療所はコロナ前より悪化しているとする診療側との間で認識が分かれた。
後発医薬品使用や消炎・鎮痛薬の処方制限なども議論
12月8日の中医協では働き方改革の推進、後発医薬品使用や薬剤給付の適正化などが議題として提案された。議論では、来年10月以降の看護職員の処遇改善について、診療側が基本診療料の引き上げを主張したのに対し、支払側は対象者の収入増につながる仕組みを求めた。また後発医薬品使用については、診療側が一般名処方加算や後発医薬品使用体制加算の評価の継続・充実を求めた一方、支払い側は、80%に達しない場合の各種加算の廃止や減算規定の創設などにも言及した。さらに分割調剤については、日薬の委員から一枚の処方箋を一定期間内で反復利用できる仕組みへの変更が提案され、支払側も同調した。診療側からは、長期処方による残薬や多剤投与のリスクを重視すべきとの意見が出された。薬剤給付については、支払側は湿布薬の一処方制限を現在の70枚から35枚制限でも十分対応できると主張したのに対し、診療側は長期処方是正と治療効果の観点で検討すべきとした。
また、この日の中医協には支払側・診療側双方から改定に対する意見が表明された。診療側は、地域医療と医療従事者を支える財源が必要であり、プラス改定しかあり得ないと主張したのに対し、支払側は診療報酬を引き上げる環境にはないとした。
新型コロナ関連検査を12月31日から引き下げ
8日の中医協では、新型コロナ関連検査の点数を、実勢価格を踏まえて12月31日から引き下げる提案があり了承された。新型コロナの核酸同時検出と、新型コロナ・インフルエンザ核酸同時検出は、委託の場合が1,350点に引き下げられ、さらに4月からは700点に引き下げられる。また委託以外の場合は700点に、新型コロナの抗原検出検査(600点)は、定性300点・定量560点に、新型コロナ・インフルエンザ抗原検査も420点にそれぞれ引き下げられる。
(つづく)