中医協での議論とともに 財政審などの動向も注視
来年の診療報酬改定に向けて、中医協総会で議論が進む中、11月8日に開催された財務省の財政制度等審議会の分科会では「マイナス改定なくして医療費の適正化はない」との姿勢で次回改定に取り組むことが示された。また「かかりつけ医」について、制度化・包括評価の必要性や、かかりつけ医以外に受診した場合の定額負担の導入に言及するとともに、医師の診察なしで処方箋を繰り返し使用するリフィル処方箋の導入なども提言している。従来、診療報酬の改定率は、厚労大臣と財務大臣の合意で決定されており、財務省サイドの議論が改定内容に大きな影響を与える可能性もあり、注視していく必要がある。
この間の中医協での改定内容の議論のうち、外来にかかわる主な内容を報告する。
小児の在宅医療、救急搬送診療料の評価検討へ
11月10日の中医協では、厚労省から小児への在宅医療(緊急往診加算、在宅がん医療総合診療料)、救急搬送診療料の評価などに係る資料が提出された。
小児の在宅医療については、成人への対応と異なる側面がある点を踏まえ診療報酬上の評価を検討する方針が示された。また救急搬送診療料について、今般のコロナ禍でECMO装着患者の転院搬送が行われた点や、日本集中治療医学会が重症患者の広域搬送におけるガイドラインを作成中である点などが報告され、ガイドラインに沿った搬送について診療報酬上の評価を検討する方針が示された。いずれの内容も診療側・支払側ともに賛同した。
紹介なしの病院受診時の定額負担額を了承
11月12日には、紹介状なしで受診する場合の定額負担や紹介・逆紹介の推進、医療資源重点活用外来を地域において基幹的に担う医療機関に係る評価について論点が提案された。
紹介状なしでの病院受診時の患者の定額負担については、「全世代型社会保障改革の方針」等において、「保険給付の範囲から一定額を控除し、それと同額以上の定額負担を追加的に求めるよう仕組みを拡充する」こととされている。議論では、追加負担額を医科初診で2千円、再診では5百円が妥当と各側の意見が一致した。その上で診療側からは、医療機関のみでなく国や保険者も説明と啓発を行うこと、今回の控除・追加負担の制度は、選定療養の枠組みでの患者が選べるという前提はなく、フリーアクセスを阻害するものであり、勤務医の負担軽減が実現した際の制度の解消を求める意見も出された。
医療資源を重点的に活用する外来医療機関に係る評価については、診療側は入院医療で評価をする方向性を主張したが、支払側は患者の受診行動が変わり専門外来に集中できるようになるとして、現時点での評価に慎重な考えを示した。
不妊治療の保険適用、疾患別リハでも議論
11月17日の中医協は、不妊治療の保険適用について議論された。まず、日本生殖医学会や日本産婦人科医会など関係五団体から意見聴取が行われ、関係学会やクリニックの総意に基づいたガイドラインを基本にする意見とともに、保険適用後に継続して行われていた不妊治療が保険適用外となり、助成制度も廃止となることで「不妊治療難民」が生まれるとの懸念が強く出され、現行の治療を継続できるような仕組みを要望する意見が相次いだ。議論では、診療側からはスムーズな制度の移行、支払側からは、既に治療を行っている患者に不利益等がない仕組み、公益側委員からは公的な助成制度の継続の重要性について、それぞれ訴えられた。
反復流産を避けるための着床前診断については、支払側から日本産婦人科学会の見解を踏まえて保険適用の検討を進めるべきとの意見があった。また、第三者の卵子・精子提供の生殖医療の規制のあり方については、診療側は、国民の倫理観、家族観などにも関わるもので、現時点での議論は時期尚早とした。
この日の中医協では、厚労省から疾患別リハビリテーションの適切な実施に係り、標準的算定日数について等の評価のあり方や、リハビリテーション実施計画書等の署名欄のあり方の見直しについて提起がされた。診療側は、医学的に必要なリハビリはしっかりと実施できるよう求めた。支払側からは、実際に状態が改善しているかのデータ収集を基に議論を進めるよう意見が出されたが、診療側はアウトカム評価ばかりでは弱者切り捨ての問題も発生しかねないとして、現状の運用の見直しには慎重な姿勢を示した。
実施計画書の署名については、遠隔地に家族がいる場合など、後日サインをもらうやり方に変える方が実態に即しているとの診療側意見の一方、支払側からはメールで確認して電磁的記録や紙媒体で保存するなど、IT機器を利用した方法の提案も出された。
その他、摂食嚥下支援加算の施設基準要件の見直し、慢性維持透析患者の運動療法の評価のあり方がそれぞれ提起されたが、診療側が要件緩和や評価の見直しを求めたのに対し、支払側は安易な要件緩和や透析中の運動実施だけへの評価には反対した。
(つづく)