2020年歯科診療報酬改定情報(4)

中医協で「個別改定項目」示される―協会・保団連の要望一部実現

 1月29日の中医協で「個別改定項目について」(いわゆる短冊)が示された。個別の点数は決められておらず、告示や通知の発出で変更される点もあるが、基本的な考え方や算定要件、施設基準の要件などは概ね明らかになった。主な内容を紹介する。

■歯初診の施設基準に「職員研修」が追加
 歯科初診料の施設基準(院内感染防止対策)の要件に、常勤の歯科医師だけでなく関係する職員を対象とした研修を行うことが盛り込まれた。
 院内感染防止のための職員研修はすでに医療法上、医療機関に義務づけられているが、それで満たすのかは具体的に示されていない。

■初診月の歯管の算定は減算・6カ月を超えて管理を行った場合に加算
 歯科疾患管理料(歯管)の初回算定については、これまでの「初診日の属する月から起算して2月以内に限り算定する」との要件が削除され、初診日の属する月に算定する場合は、減算されることとなった。どの程度の減算となるかは不明。
 また、初診日の属する月から6カ月を超えて管理を行った場合に算定する「長期管理加算」が新設される。長期管理加算は「か強診」とそれ以外の医療機関で点数の差が設けられている。

■CAD/CAM冠の適応範囲拡大、手術時の麻酔薬剤の算定が可能に
 保団連・保険医協会の要望が実り、不十分ながら実現した項目もいくつか示された。
 上下両側の第二大臼歯残存要件に変更はないが、CAD/CAM冠の適応が上顎第一大臼歯にも拡大された。同日に示された「特定保険医療材料に係る機能区分の見直し(案)」では、「機械的強度の高いものを別の機能区分とする」として、これまでCAD/CAM冠材料(Ⅰ)だったものを(Ⅰ)と(Ⅱ)に分け、(Ⅱ)だったものを(Ⅲ)とすることが示された。
 機械的歯面清掃処置は、原則2カ月に1回とされている。外来または歯科訪問診療において歯科診療特別対応加算を算定する患者と妊婦は1カ月に1回算定できることとなっているが、これに糖尿病患者が加えられた。ただし、医科医療機関からの情報提供に基づき紹介された患者に限られている。
 現在、手術の所定点数に包括されている歯科麻酔薬については薬材料の算定が可能となる。ただし、改定案では「別に厚労大臣の定めるところにより算定できる」とされており、適応手術が絞られる可能性もある。

■歯周病に重症化予防の評価が新設
 歯周病安定期治療(SPT)の対象となっていない歯周病を有する患者に対して「歯周病重症化予防治療」が新設される。
 対象患者として、2回目以降の歯周病検査後に歯周ポケットが4㎜未満の患者、歯周組織の大部分は健康だが、部分的に歯肉に限局する炎症症状を認める、またはプロービング時の出血が見られる患者となる。
 2回目以降の歯周病検査後とされているが、「歯周疾患治療の流れ」における位置づけは示されておらず、管理方法については不明である。

■周術期等の口腔機能管理を推進
 周術期等の口腔機能管理の評価が見直される。前回改定に続き、今回も歯科・医科連携が重視されている。
 化学療法や放射線療法などが行われている患者に対して実施する周術期等口腔機能管理料(Ⅲ)(周Ⅲ)の評価を見直し、周Ⅲを算定した患者に行う周術期等専門的口腔衛生処置1(術口衛1)の算定制限回数が見直される。
 周Ⅲに対する術口衛1は、これまで月1回の算定だったが、月2回とされた。それに合わせて周Ⅲ自体の点数変更も行われるが、現在のところ引き上げられるのかは不明である。

■小機能・口機能の管理が歯管の加算から外れる
 歯管の小児口腔機能管理加算と口腔機能管理加算が、加算項目から外れ、単独の管理料として小児口腔機能管理料と口腔機能管理料となる。加算から外れることにより、必要な検査や口腔機能の評価を歯管算定日とは別日に算定することが可能となる。ただし、対象患者に歯管を算定していることが要件となる。また、歯管だけでなく歯科特定疾患療養管理料(特疾管)を算定する患者も対象となった。
 関連して、小児口唇閉鎖力検査が新設、舌圧検査も6カ月に1回から3カ月に1回の実施が可能となった。

■技術評価も一部拡大
 これまで手術用顕微鏡を使用して4根管または樋状根に加圧根管充填処置(加圧根充)を行った場合に算定する手術用顕微鏡加算(手顕微加)は、3根管以上が加算の対象となった。また、手術用顕微鏡を用いて、根管内異物除去を行った場合の評価が新設される(施設基準の届出が必要)。
 昨年12月に保険導入された象牙質へのレジンコーティングが、間接歯髄保護処置の準用から単独の処置として評価される。
 2月7日に中医協への答申が行われた。3月上旬には告示・通知が発出されて今回改定の全貌が明らかになる。情報が入り次第お伝えしていく。

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