歯科診療報酬改定情報(5)

 1月27日に開かれた中医協で、厚労省から「個別改定項目」が提案された。項目の中には個別点数は盛り込まれていないが、点数設定の考え方や算定要件、施設基準、包括範囲等が示されており、改定の全体像が概ねわかるものとなっている。この日の他、1月29日、2月3日の中医協で議論がされ、提案内容も一部変更がされている。
 個別改定項目の内容をみると、かかりつけ歯科医機能については、「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」が新設され、施設基準が示された(別掲)。1月27日に提案された施設基準には、“敷地内が禁煙であること”の要件が入っていたが、2月3日に出された「個別改定項目その3」では、そこまでの要件設定は難しいとの厚労省の判断で削除されている。かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所が算定する点数として、新たに歯科疾患管理料に加算するエナメル質初期う蝕管理加算、歯周病安定期治療(Ⅱ)、在宅患者訪問口腔リハビリテーション指導管理料の加算が設けられるが、これらに包括される検査や処置なども示されている。

歯科疾患管理料の文書提供は加算点数に


 歯科初・再診料については、公聴会でも発言があり、パブコメでも引き上げを求める意見が多数あったが、今次改定では点数の改定はない。歯科外来診療環境体制加算については、初診時・再診時とも点数が改定となる。
 医学管理では、これまで改善を要望していた歯科疾患管理料の管理計画書の文書提供が算定要件から外され、文書提供を行った場合の加算点数が設けられる。在宅の場合に算定する歯科疾患在宅療養管理料(歯在管)も同様に改定される。周術期口腔機能管理に関しては、周術期口腔機能管理計画策定料と周術期口腔機能管理料(Ⅲ)の対象に緩和ケアを実施する患者が加えられる。また、全身的な疾患を有する患者の歯科治療の際にバイタルサインのモニタリングを行った場合の評価として、歯科治療総合医療管理料(Ⅱ)が新設される。

歯科訪問診療の20分要件や、同一世帯複数患者の算定で改善も


 在宅歯科医療では、同一建物で1人に行う歯科訪問診療1について、「著しく歯科診療が困難な者」の場合は20分要件を満たしていなくても算定できること、同居する同一世帯の複数の患者に歯科訪問診療を行った場合、1人目は歯科訪問診療1が算定できることなど、協会・保団連が要望してきた内容が一部反映されている。その他、歯科訪問診療で行う処置、手術、歯冠修復・欠損補綴に係る100分の50加算の見直し、歯科訪問診療の際の歯科訪問診療3の引き下げなどが行われる。
 また今回改定では、在宅専門の歯科医療機関の開設が認められる。その要件として地域をあらかじめ規定していること、外来診療が必要な患者に対応できるよう地域歯科医師会から協力の同意または地域内に協力歯科医療機関が2カ所以上確保されていることなど7つの要件が示された。そして、在宅歯科医療を専門に実施する在宅療養支援歯科診療所(歯援診)の施設基準も新設され、(1)在宅歯科医療を提供した患者の割合、(2)過去一年間に初診患者の情報提供があった保険医療機関の数、(3)歯科訪問診療1の算定割合、(4)在宅歯科医療に係る3年以上の経験を有する歯科医師、(5)歯科用ポータブルのユニット・バキューム・レントゲン、(6)過去1年間の抜髄や感根処、抜歯、有床義歯装着・修理・床裏装のそれぞれの件数――など、6要件が出されている。なお、現行の歯援診の施設基準には、在宅歯科医療を提供した患者の割合が一定未満であることが追加される他、歯援診で算定する歯在管の口腔機能管理加算が歯在管の点数に包括される。

歯周病安定期治療は算定要件が緩和


 処置では、う蝕多発傾向者、在宅療養患者に対して算定するフッ化物歯面塗布処置が新設され、それぞれ点数が設定される。また、歯周病安定期治療については算定要件から「中等度以上」の文言がなくなり、「骨吸収が根の長さの3分の1以上」の要件を満たさなくても、「4ミリメートル以上の歯周ポケットを有するもの」であれば算定できることになる。
 点数が改定される処置としては、機械的歯面清掃処置、歯髄保護処置の歯髄温存療法・直接歯髄保護処置、根管貼薬処置、う蝕薬物塗布処置(乳幼児う蝕薬物塗布処置から名称変更)、知覚過敏処置、初期う蝕早期充填処置などがあげられている。また手術では、難抜歯の点数が抜歯の前歯・臼歯の加算点数に再編される。日常的に行われる処置・手術の点数が何点となるのか注目される。


補診は「1装置単位」の算定となり、点数も2区分に


 歯冠修復・欠損補綴では、補綴時診断料が「1口腔につき」の算定から「1装置につき」の算定に変わり、新製の場合の点数と有床義歯修理・床裏装の場合の点数に区分される。
 硬質レジンジャケット冠とCAD/CAM冠については、適応が大臼歯に拡大されるが、歯科用金属を原因とする金属アレルギーを有する患者で、医科から診療情報提供に基づく場合に限られる。またレジン前装金属冠については、ブリッジの支台歯となる第1小臼歯に限り適応範囲が拡大される。
 義歯新製から6カ月以内の床裏装の算定については、100分の50となる義歯修理に合わせて変わるとともに、床裏装の点数に、下顎総義歯に限り軟質材料を用いる場合の点数が設けられる。また、床修理の歯科技工加算については、義歯を預かった当日に装着した場合の点数と、預かった翌日に装着した場合の点数に区分される。
 点数が改定される項目としては、支台築造印象、硬質レジンジャケット冠、有床義歯、鋳造鉤、線鉤、バー、補綴隙、有床義歯修理などがあげられている。また、1月から保険適応となったファイバーポストを用いた場合の支台築造の点数が別区分で設定がされるが、ブリッジ作製の際の平行測定検査は点数表から削除される。

具体的な点数が入った答申がされ次第、会員に送付


 その他、新規技術の保険導入として、舌接触補助床を装着した患者に対する舌圧検査、レジン前装金属冠・硬質レジンジャケット冠(前歯部に限る)を製作する場合の歯冠補綴時色調採得検査、矯正のフィクスドリテーナーなど、新たに保険点数が設定される項目もある。
 2月10日頃には、中医協で具体的な点数が入った改定内容が答申される。協会では改定の概要について、全国保険医新聞の答申特集号を会員に送付する予定。  

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