通知カードと個人番号カード
二〇一六年一月から社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)が始まる。医療機関もマイナンバー(個人番号)を取り扱う事務に関して、様々な対応が迫られる。今回から制度施行に向けて留意しておきたいポイントについて連載する。
通知カードの入手・保管 従業員に徹底を
今月五日以降に、十二桁の個人番号が記載された「通知カード」が住民票の所在地に、世帯ごと簡易書留で郵送される。「通知カード」は紙製で、氏名・住所・生年月日・性別の基本四情報と個人番号が記載される。
当面は十二月の年末調整の際に従業員に記入、提出してもらう「平成二十八年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に、従業員の個人番号の記入を求めることになる。
まずは従業員に、郵送されてくる「通知カード」を確実に入手し、保管するように徹底する必要がある。住民票の所在地に家族分がまとめて送付されるので、住民票を実家等に置いたままで家族と別居しているような従業員には、特に注意を促したい。また、従業員に所得税の扶養親族がいる場合は、その親族の個人番号の記入も求めることになる。従業員が扶養親族の個人番号を確認することになるので徹底しておきたい。
なお、医療法人には十三桁の法人番号が、十一月に国税庁から通知される。個人番号のように「通知カード」ではなく、書面により登記されている所在地に郵送される。原則としてインターネット(国税庁法人番号公表サイト)に公表される。しかし、個人開業の医師・歯科医師は個人に付番された個人番号が事業者の番号となる。
事業者が報酬を受け取る場合には報酬を支払う者(法定調書提出義務者)に番号の提出が必要となる。個人事業主の場合、個人のプライバシーの流出リスクを抱えており、「個人事業者番号」の導入が緊急の課題となっている。
個人番号カード申請は慎重に
「個人番号カード」は来年一月以降、「通知カード」に同封された申請書に顔写真を貼って市町村長に申請すると無償で交付される。ICチップ付きカードで、表面に基本四情報と顔写真、裏面に個人番号が記載される。本人確認のための身分証明書として利用できるほか、ICチップに搭載された電子証明書でマイナポータル(二〇一七年一月運用開始予定)の利用やe-taxなど各種電子申請ができる。また、自治体が条例で定めれば、図書館利用証や印鑑証明書発行などにも使用できる予定だ。なお、ICチップに所得情報や病歴等の機微な個人情報は記録しないことになっている。
財務省が二〇一七年四月の消費税一〇%への増税を念頭に検討している還付金制度(日本型軽減税率制度)は、「個人番号カード」の活用が前提とされており、カードの普及も狙っている。しかし政府は、初年度の発行枚数を一千万枚程度と見込んで予算化している。普及率は全人口の一割程度だ。マイナンバー制度導入前から既に民間利用の拡大が検討されており、個人番号に紐付けされた個人情報流出リスクの増大と、国の監視に不安が高まっている。
「通知カード」でも個人番号の確認は可能であるため、「個人番号カード」の申請は慎重に判断したい。
(つづく)