投薬の留意事項
投薬については、処方単位の考え方や処方内容、レセプト記載の方法など請求時に留意が必要な点が多くある。今回は、歯科医療で扱うことが多い部分についての基本的な考え方について下記にまとめた。なお、この間、薬剤の効能・効果を重視した審査がすすめられている。協会では歯科医師の裁量権を重視した審査を行うよう要望しているが、投薬の正当性を主張するためにも、カルテ記載などにあたってはその必要性を十分に記載することが求められる。
1.院内で投薬を行った場合は、「薬剤料+調剤料+処方料」を算定する。
2.院外処方により投薬を行った場合は、「処方せん料」を算定する。なお、院外処方を行うにあたって届出は特に必要ない。
3.同月のレセプトで院内処方と院外処方は混在してもよいが、同一の患者に対して、同一診療日に、一部の薬剤を院内において投薬し、他の薬剤を院外処方せんにより投薬することは、原則として認められない。
4.万一緊急やむを得ない事態が生じ、例えば同一患者に対し処方せんを交付した同日に抜歯直後などの必要性から頓服薬を投与する場合は、処方せん料と院内で出した薬剤料のみ算定し、処方料と調剤料は算定できない。レセプトの「摘要」欄にその日付および理由を記載する。
5.投与量は予見することができる必要期間に従うこととされている。
6.長期の旅行、年末年始等の特殊な事情があり、長期投与が必要と認められるときは、旅程などを考慮して必要最小限の範囲内において投与する。この場合は、レセプトの「摘要」欄に長期投与の理由を記載する。
院内処方(下表参照)
1.薬剤料
(1)薬価が所定単位につき15円以下である場合は1点。薬価が所定単位につき15円を超える場合は、15円を控除した残りの額を10円で除し1点未満の端数を切り上げた点数に1点を加算する。
例)薬価57円の場合
57.00円-15.00円=42.00円÷10=4.2≒5点(切り上げ) 5点+1点=6点
※速算法として「所定単位薬価を10で除して小数点以下を五捨五超入する」方法がある
(2)所定単位とは、内服薬は1剤1日分、頓服薬は1回分、外用薬は1調剤分をそれぞれ1単位とする。内服薬の場合、2種類の薬を同時にかつ回数が同じである処方は1剤、食後と食間など、服用時点が異なる処方は2剤という。頓服薬の1回分とは1回に服用する量の意味である。
2.調剤料
内服薬、浸煎薬および頓服薬…9点
外用薬…6点
(1)投薬を行った場合、剤数・日数・調剤量にかかわらず1回の処方につき所定点数を算定する。
(2)1回の処方で頓服薬のみを処方した場合、内服薬と頓服薬を処方した場合いずれも、調剤料は9点で算定する。
(3)処方せんを発行した場合、調剤料は算定できない。
(算定例)
内服薬1剤2日分、頓服薬2回分、外用薬を処方した場合
3.処方料…42点
(1)投薬を行った場合、1回の処方につき算定する。
(2)3歳未満の乳幼児に対して処方を行った場合は、1処方につき3点を加算する。
4.レセプト記載
(1)薬剤料の請求は「内(用薬)・頓(服)・外(用薬)・注(射)」の該当するものに○印で囲み、内服は「点数×日数」、頓服は「点数×回数」、外用は「点数×投与回数」を記入する。
(2)「摘要」欄に「薬剤名」、「規格・単位」および「使用量」、「回数」を記入する。後発医薬品等で、同一名称で複数の製薬会社で生産されている場合もあるので、「薬剤名」の記載は製薬会社名も含めて、正式名称を記載する。
(3)調剤料の請求は、「調9× 6× 」に、処方料の請求は「処方42× 」に回数を記入する。
(4)手書きである旨を東海北陸厚生局に届け出た保険医療機関(電子レセプト請求の免除・猶予の届出とは異なる)にあっては、1単位17点以下の薬剤の「摘要」欄記載は省略できる(届出方法については、「歯科保険診療の要点2010年8月版」P.312を参照)。
院外処方
1.処方せん料…68点
(1)保険薬局において調剤を受けるために処方せんを交付した場合、交付1回につき68点を算定する。レセプトの「投薬・注射」欄の「処68× 」に回数を記載する。
(2)カルテには処方内容を必ず記載する。
(3)同時に2枚以上の処方せんを発行しても、算定は1回のみ。症状の変化によって1日2回診察し、処方せんを2回発行した場合(午前に抗生物質、午後疼痛により頓服など)は2回算定できる。「摘要」欄に「 1日2回発行」「1日2度来院」と記載する。
(4)処方せんの通用期間は交付の日を含めて4日間。
(5)3歳未満の乳幼児に対して処方せんを交付した場合、交付1回につき3点を加算する。
(6)処方せんを発行した場合は、薬剤情報提供料は算定できない。