支払基金が「縦覧点検」「突合点検」実施を予定

支払基金が「縦覧点検」「突合点検」実施を予定

支払基金では、4月から順次、電子レセプトについて、新しい審査システムの導入を行うとしている。歯科は「縦覧点検」を4月、「突合点検」を7月から行うとしていたが、東日本大震災のため実施は延期される。現時点でいつから実施されるかは明らではないが、新しい審査システムの導入で、1次審査在り方が大きく変わる可能性は高い。今回はその仕組みと問題点について解説する。

「縦覧点検」とは

縦覧点検とは、1人の患者に対するレセプトについて医療機関単位で複数月に渡って並べて点検を行うことをいう。今回、基金が行うとしている縦覧点検は以下の方法で行われる。

(1)複数月(過去6カ月)にわたって同一医療機関から請求された同一患者のレセプトをコンピュータを用いて紐付け
(2)同一月に同一医療機関から請求された同一患者の「入院」及び「入院外」レセプトをコンピュータを用いて紐付け
(3)点検は、当月請求されたレセプトについて、過去の請求内容を参照しながら行う(入院と入院外は同一月のレセプトの請求内容)

なお、参照する過去のレセプトについては直ちに査定の対象とはならない(つまり、査定の対象となるのは当月のレセプトだけ)。ただし、誤りを発見した過去のレセプトは、必要に応じて保険者または医療機関に連絡し、再審査請求を受けて改めて審査を行うとしている。また、今のところ、紐付けを行うのは、同一医療機関から請求された同一患者のみであり、同一患者の複数医療機関にわたる請求まではチェックしない。基金が縦覧点検でチェックする具体的な項目は(表1)の通り。なお、6カ月を超える算定ルールについては、当該行為のみ抽出して、患者単位に蓄積するとしている。過去のデータについては、3月審査分(2月診療分)から順次、コンピュータに蓄積していく。
基金ではこれまで一月分のレセプトのみで審査をしており、このシステムの導入で審査の在り方が大きく変わることは間違いない。
歯科医療機関としては、自院で行っている治療の流れなどを再確認するとともに、通常の治療の流れと異なる場合は、その必要性を充分にカルテ(場合によってはレセプトにも)に記載するなどの対応が必要となる。また、納得のいかない査定(減点)に対しては、これまで以上に再審査請求を積極的に行うことが重要である。
なお、従来、保険者が行っていた縦覧点検は、同一患者の複数医療機関にわたる紐付けも含め継続される。

「突合点検」とは

突合点検とは、処方せんを発行した医療機関のレセプトと、その処方せんをもとに調剤を行った薬局のレセプトを患者単位で照合する審査のことをいう。これまで、この点検は、保険者側で1500点以上の調剤レセプトを対象に行われていたが、今後は基金で全例を対象に実施される。今回、行うとしている突合点検は以下の方法で行われる。

(1)処方せんを発行した医療機関のレセプトとその処方せんに基づいて調剤を行った薬局のレセプトをコンピュータを用いて患者単位に紐付け
(2)医療機関のレセプトに記載された傷病名と調剤レセプトに記載されている医薬品の「適応」、「投与量」、「投与日数」を点検
(3)点検後の審査の結果、査定がある場合
・調剤が不適当な場合は薬局への支払額から差し引く
・病名もれなど、処方せんが不適当な場合は、医療機関への支払額から差し引く

基金が突合点検でチェックする具体的な項目は(表2)の通り。全レセプトが対象であるため、適応症や投与量、投与日数などについてはこれまで以上に機械的なチェックが強化されるおそれがある。
歯科医療機関としては薬理作用を重視するよう摘要欄への症状詳記を増やすなどの対応をこれまで以上に丁寧に行う必要がある。

画一的な審査につながる可能性も

この様な審査の在り方は、基金が今年1月13日にまとめた「支払基金サービス向上計画」(2011年度~2015年度)に基づくものである。計画では、審査におけるコンピュータチェックの割合を大きく増やす、保険者からの再審査を概ね半減する(つまり基金の審査での査定を大幅に増やす)、などが目標として掲げられている。
来年度には電子レセプトについて、処置行為ごとに日付を付与することも実施予定である。これと縦覧点検・突合点検を利用すれば、基金・連合会はカルテに限りなく近い形で審査を行うことができるようになる。
今後、コンピュータチェックの活用とともに、機械的、画一的な査定が増える可能性が高い。歯科医師が診断した内容についてカルテへの記載を充実させることや、場合によってはレセプトの摘要欄を利用して理由の説明を行うことなども大切である。また、納得のいかない査定については、少ない点数であっても再審査請求を行い、診療の妥当性を主張することが求められる。再審査請求を行わないことは、査定の内容を容認したと見なされるため、同じような請求を繰り返した場合、「間違いと認めながら同じ内容の請求を漫然と行っている医療機関」という判断をされかねない。再審査請求の際には、歯科医学的に妥当な内容であることはもちろん、診療報酬のルールを理解しておくことも大切である。
診療報酬上の解釈などで、不明な点については、保険医協会でも随時相談に応じているので、ぜひご利用いただきたい。お問い合わせは、協会歯科担当事務局(電話:052-832-1349)まで。

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