「個別改定項目について」その2
前号に続き、「個別改定項目について」(「短冊」)に示された歯科医療に関わる主な内容を紹介する。
外来環は「医療安全」と「感染対策」に分割
歯科外来診療環境体制加算(外来環)は、医療安全対策の取り組みを行った場合の「歯科外来診療医療安全対策加算」と、新興感染症等の患者に対応可能な院内感染対策の取り組みを行った場合の「歯科外来診療感染対策加算」に分割され、外来環自体は廃止される。いずれの加算も施設基準の届出が必要となる。
―歯科外来診療医療安全対策加算
「歯科外来診療医療安全対策加算」は「1」と「2」があり、「2」は地域歯科診療支援病院歯科初診料を算定する歯科医療機関が算定し、それ以外の歯科医療機関は「1」を算定する。
現在示されている施設基準は、①歯科医療機関、②医療安全対策に係る研修を受けた常勤医の配置、③複数の歯科医師、または歯科医師と歯科衛生士の配置、④医療安全管理者の配置、⑤緊急時対応の体制整備、⑥医療安全対策の体制の整備、⑦院内掲示、⑧原則としてウェブサイトへの掲載。
施設基準は、初診、再診共通。②、③の配置人数は示されていない。今年3月31日時点で外来環の届出を行っている場合は、④、⑥、⑦について経過措置(期間は示されていない)が設けられる。
―歯科外来診療感染対策加算
「歯科外来診療感染対策加算」は「1」から「4」に分かれている。「3」「4」は地域歯科診療支援病院歯科初診料を算定する歯科医療機関が算定し、それ以外の歯科医療機関は「1」または「2」を算定する。
現在示されている施設基準は、「1」では①歯科医療機関、②初診料の注1(院内感染防止)の施設基準の届出、③複数の歯科医師、または歯科医師と歯科衛生士の配置、④院内感染管理者の配置、⑤院内感染防止対策の体制整備。
「2」は上記①から⑤に加えて、⑥新型インフルエンザ等感染症等の罹患患者または疑似症患者に対する診療体制の確保、⑦新型インフルエンザ等感染症等に係る事業継続計画の策定、⑧新型インフルエンザ等感染症等に係る医科医療機関との連携体制の整備、⑨他の歯科医療機関から新型インフルエンザ等感染症等の罹患患者または疑似症患者を受け入れるための連携体制を確保。
施設基準は、初診、再診共通。③の配置人数は示されていない。今年3月31日時点で外来環の届出を行っている場合は、「1」では④、「2」では④~⑨について経過措置(期間は示されていない)が設けられる。
エナメル質初期う蝕、根面う蝕に管理料新設
―エナメル質初期う蝕管理料
歯科疾患管理料(歯管)または歯科特定疾患療養管理料(特疾管)を算定したエナメル質初期う蝕(Ce)に罹患している患者に対して、Ceの評価に基づく管理計画を策定し患者に説明した上で管理を行う場合に算定する「エナメル質初期う蝕管理料」が新設される。
これまでか強診の届出を行った歯科医療機関が算定していたエナメル質初期う蝕管理加算(歯管への加算)はか強診とともに廃止され、新設された小児口腔機能管理料の口腔管理体制強化加算の施設基準を届け出た歯科医療機関は、「エナメル質初期う蝕管理料」に加えて、口腔管理体制強化加算を算定する。(口腔管理体制強化加算については、2月5日号「歯科のページ」を参照)
―根面う蝕管理料
歯科訪問診療料を算定した在宅療養患者、歯管または特疾管を算定した初期の根面う蝕に罹患している65歳以上の患者に対して、根面う蝕の評価に基づく管理計画を策定し患者に説明した上で、非切削で管理を行う場合に算定する「根面う蝕管理料」が新設される。
「根面う蝕管理料」も、新設された小児口腔機能管理料の口腔管理体制強化加算の施設基準を届け出た歯科医療機関は、口腔管理体制強化加算を算定することができる。
―F局の要件など一部変更
フッ化物歯面塗布処置(F局)の算定要件などが一部変更される。
う蝕多発傾向者の場合の対象が、歯管または特疾管を算定した患者に加え、「歯科訪問診療料を算定した患者」が追加される。
初期の根面う蝕に罹患している患者の場合は、歯科訪問診療料を算定した在宅療養患者か、歯管を算定した65歳以上の患者だったが、新設された「根面う蝕管理料」を算定した在宅療養患者か、65歳以上の患者に変更される。
エナメル質初期う蝕に罹患している患者の場合は、新設された「エナメル質初期う蝕管理料」の算定が要件とされる。
2回目以降のF局は、原則レセプトを2枚空けて算定するが、上記で解説したエナメル質初期う蝕管理料への口腔管理体制強化加算を算定した場合は、一月に一回算定することができる。
周術期口腔機能管理の見直しと回復期口腔機能管理の新設
周術期等口腔機能管理計画策定料(周計)の対象患者に、手術を行わない急性脳梗塞患者など、集中治療室における治療を実施する患者が追加される。
周術期等口腔機能管理料Ⅲ(周Ⅲ)の管理対象患者に、集中治療室における治療を実施する患者が追加される。周計算定後、一定期間(期間は示されていない)管理を行った場合の「長期管理加算」が新設される。
周術期等口腔機能管理料Ⅳが新設される。管理対象患者は、放射線治療などを実施する入院中の患者。外来患者は周Ⅲで管理する。周Ⅲ同様、周Ⅳにおいても長期管理加算が新設される。
周術期等専門的口腔衛生処置1(術口衛1)は、周術期等口腔機能管理料Ⅰ(周Ⅰ)、周術期等口腔機能管理料Ⅱ(周Ⅱ)を算定した入院中の患者とされていたが、外来患者にも術前1回、術後1回の算定ができることとされる。また、周Ⅲ算定患者だけでなく、新設された周Ⅳ患者にも月2回算定できる。
回復期リハビリテーション病棟などに入院する患者に対し、口腔機能の管理計画を策定し、管理などを実施する場合の「回復期等口腔機能管理計画策定料」、「回復期等口腔機能管理料」、「回復期等専門的口腔衛生処置」が新設される。
歯科訪問診療料の細分化
これまで3段階に区分されていた歯科訪問診療料が、歯科訪問診療5まで五段階に細分化される。これまでの歯科訪問診療2は2~9人、歯科訪問診療3は10人以上だったが、新たな歯科訪問診療2~5までがどのような人数区分となるかは示されていない。
診療時間が20分未満となった場合の減算について、歯科訪問診療1は減算の対象から外れる。新たな歯科訪問診療2、3は患者の容体急変で20分未満となった場合は減算しないこととされたが、歯科訪問診療4、5には適用されない。
訪衛指の評価見直し
歯科訪問診療料を算定した緩和ケアを実施する患者に対して、訪問歯科衛生指導料(訪衛指)の算定回数制限が見直される。また、指導が困難な患者に対し、同一歯科医療機関の複数の歯科衛生士が同時に訪衛指を行った場合に算定する「複数名訪問歯科衛生指導加算」が新設された。訪衛指の点数評価そのものも見直される。
その他の主な項目
―これまで医科医療機関から歯科治療に関する照会があった場合、文書で回答を行っても算定できる項目がなかったが、診療情報等連携共有料で算定できることとなる。
―口腔機能発達不全症の患者や口腔機能低下症の患者に対して、指導訓練を行った場合に算定できる「歯科口腔リハビリテーション料3」が新設される。
―歯科衛生士が歯科衛生実地指導を行う際、あわせて口腔機能に係る指導を行った場合に算定できる「口腔機能指導加算」が新設される。
―学校歯科健診で不正咬合の疑いがあると判断された患者に対して、歯・歯列の状態、咬合状態または顎骨の形態などの分析、診断を行い、診断結果などを文書で提供した場合に算定できる「歯科矯正相談料」が新設される。(つづく)