医科診療報酬改定情報(5)

 12月20日の厚労大臣と財務大臣の折衝で、2024年6月の診療報酬改定は、全体でマイナス0.12%とすることが合意された。
 改定率の内容は、看護職員・病院薬剤師などの従事者の賃上げで0.61%、入院の食事療養費で0.06%、その他で0.46%(医科0.52%、歯科0.57%、調剤0.16%)の引き上げとなるが、生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等の効率化・適正化で0.25%の引き下げが盛り込まれ、診療報酬本体の改定率はプラス0.88%(国費ベースで約800億円)となった。一方、薬価と材料で1.00%(薬価0.97%、材料価格0.02%)が引き下げられ、トータルでは6回連続のマイナス改定となる。

十分な財源確保がされず保険医療の改善には程遠い
 今回の診療報酬改定も、薬価等の引き下げの財源(国費ベースで約1200億円)は本体改定分に充当されず、引き上げ財源は十分確保されなかった。また、財源の使途が決められている看護職員等の賃上げと入院の食事分を除いたその他の引き上げ0.46%のうち、0.28%程度は40歳未満の医師・歯科医師、薬局薬剤師、事務職員、委託先歯科技工士の賃上げに充てるとされており、特定されない引き上げ財源はほとんどなく、保険医療の改善・向上には程遠い改定率である。
 診療報酬は医療機関の経営の原資であるとともに、保険医療の内容・水準や質の向上にも影響する。診療報酬を改善し引き上げることは、国民の命と健康を守る国の使命であり、政策の根幹である。医療費の総枠を拡大し財源を確保して、診療報酬を大幅に引き上げることが必要である。

中医協では生活習慣病の管理や在宅医療などで議論
公聴会を1月19日に予定

 中医協総会では、12月8日に生活習慣病管理料、特定疾患療養管理料が議論となった。厚労省は生活習慣病管理料の「少なくとも月1回以上の総合的な治療管理」の要件の見直しを提案し、支払側が要件廃止を主張したが、診療側は現行要件の妥当性を訴えた。また、特定疾患療養管理料の算定対象から高血圧・糖尿病・脂質異常症を外し、生活習慣病管理料の算定とすべきとする支払側に対し、診療側は、基礎的な疾患への内科系医師の技術料の評価であると強調した。
 12月15日には、在宅医療について、訪問診療が多く往診や看取りの実績が少ない医療機関を問題視し、在宅療養支援診療所などの要件を厳格化することが提案された。支払側は賛同したが、診療側は訪問診療の頻度で在支診の役割を判断することに慎重な対応を求めた。また在医総管・施設総管の包括的支援加算の対象の見直しも議論された。その他、オンライン診療における初診時の向精神薬処方禁止の厳正な対処や、高齢者の救急患者を受け入れるための早期リハビリや栄養管理、在宅復帰など包括的機能を持つ新たな入院病棟の創設なども議論された。
 なお、同日に議論された長期収載先発品に係る選定療養の患者負担の範囲については、前述の大臣折衝で、後発医薬品との価格差の4分の1とすることが合意されている(10月実施)。 
 12月20日の中医協では、介護保険施設の求めに応じた在支病などの協力医療機関の評価、有床診療所における訪問リハ、訪問栄養食事指導、医療型短期入所の医療提供の位置づけや評価なども議論された。さらに12月22日には、精神医療や医学管理におけるプログラム医療機器の評価などが提案された。また中医協公聴会を、1月19日(金)午前10時から開催することが示された。

介護報酬改定
居宅療養管理指導等が6月、
介護医療院等その他の改定は4月に実施

 なお、2024年度に改定となる介護報酬は全体で1.59%の引き上げで、外枠として処遇改善や光熱水費の対応分0.45%相当の引き上げ効果が見込まれた。介護報酬の改定は、居宅療養管理指導や訪問看護、訪問リハ、通所リハについては6月、介護医療院を含むその他のサービスは4月に改定とすることが決められた。また、障害福祉サービス等報酬は1.12%の引き上げ、外枠で処遇改善等0.40%相当が見込まれている。

※2024年度のネット改定率は看護職員等の処遇改善+0.61%、入院時食事基準額の引き上げ+0.06%、その他の改定分+0.46%、生活習慣病を中心とした管理料、処方箋料等の再編等の効率化・適正化-0.25%を含めて、本体改定率を0.88%として、薬価等の改定率-1.00%を加味したもの。
・ネット改定率について、2018年度は外枠での削減分を含めている。また2020年度は働き方改革の特例的な対応を含めている。
・2022年度のネット改定率は、看護の処遇改善、不妊治療の保険適用、リフィル処方箋の導入、小児の感染防止対策に係る加算の廃止を含め本体改定率を0.43%とした数値に、薬価等の改定率-1.37%を加味したもの。

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