障害者歯科診療の実際③(愛知保険医新聞2023年10月25日号)

~障害者歯科の具体的対応方法~
歯科部員 小関 健司

障害者への対応は、百人いたら、百通りの対応があり、個別の試行錯誤が必須である。基本は、術者と患者・保護者との信頼関係である。

障害者との接し方

障害のある方との接し方は、困難である。特に、診療行動の理解が得られにくい場合などは、様々なコミュニケーションツールを活用する必要がでてくる。例えば、視覚媒体を用いたTEACCH法(治療の順番を構造化する)やPECS法(絵カード使用)など、非言語でのコミュニケーションを保護者や介助者などと共同で行う。

小児の障害への対応

よくトレーニング(行動療法)が行われるが、大変有用で有意義な反面、目標がないと、医療側が楽な方へ流れ、問題を先送りしてしまうこともある。効果は発達年齢を参考にする場合が簡単であり、発達年齢が2歳6カ月以上の患者は口腔内診査、3、4歳以上の患者は歯科治療が可能といわれている。
声かけをシンプルに、担当者を変えずに患者とは1対1で行い、毎回同じ順序、同じ刺激、終了時などは介助歯磨きなどをし、褒めるなどすることで正の強化をして終了する。
患者家族に対し、現在の困っている事象について、共有と共感から、治療への協力へつなげ、達成可能な具体的な目標、例えば次回来院時までの宿題として設定し、その希望を持てるムンテラ(保護者がその気になる事)が必須であり、早期に良好な信頼関係を築くことが重要である。
障害児も必ず成長をするという観点も必要である。待ち、良い意味での先送り、スモールステップで次の課題を提示しながら、保護者側、医療側ともに普通に治療ができるようになっていく喜びなどの達成感を得ながら進む事が望ましい。

体動抑制

体動は、原始反射や不随意運動、受診行動の不理解、不快な経験による診療拒否、痛みや生理的状態の際など、様々な要因で起こる。身体抑制は、近年では抑制をしない傾向がほとんどであるが、そこには患児のトラウマが生じるのではないかという懸念からである。しかし自閉症スペクトラム障害児に対して、抑制的な歯科治療は、将来的にトラウマにはならないという報告も多数ある。日本小児歯科学会・日本障害者歯科学会の身体拘束下での歯科治療に関する基本的考え方は、「診療の切迫性」・「抑制以外に歯科治療が逐行できない非代替性」・「一時的な手段とする一時性」の3要件を満たしていると判断した上で、方法を保護者へ十分な説明をし、書面による同意を得ることが必要としている。

外来全身麻酔での歯科治療の様子

薬剤による行動調整

通法にて歯科治療を受け入れられない患者に対しては、鎮静や全身麻酔などの薬物を使用する必要がでてくる。
各薬剤の効果などを熟知し、そのメリット・デメリットを保護者などに十分に説明する必要があるが、不確実な薬物行動調整法の選択は、患者本人にとって苦痛になりうる。レディネス(いわゆる発達年齢や精神年齢、経験)により、例えば2歳未満の患者はトレーニングの効果は期待できず、意識消失させる深鎮静や静脈内鎮静、全身麻酔が適応となる。また、自院で解消できない場合は高度医療機関へ依頼することになるが、機関も日々状況が変わっていると認識した上で、綿密な関係を常に構築しておくことも重要である。
2024年には、障害者差別解消法が施行される。これは役所を含む様々な事業所、企業などに対し、障害者に対する「不当な差別的扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」を求めるものである。当然歯科医院もそこに含まれ、無関心や環境の整備を怠ることが問題になる。逆に、障害者に配慮した歯科医院は、すべての患者にとって安心して受診できる歯科医院であるともいえる。
障害の種類や程度にかかわらず、全ての人が互いに認めながらよりよい歯科臨床が出来ることを切に願う。

(おわり)

障害者歯科診療の実際①~多様性と患者ニーズ~

障害者歯科診療の実際②~障害者歯科の問題点~

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