~障害者歯科の問題点~
歯科部員 小関 健司
障害者は、その理解力や病識の認知、各運動機能不全などで、口腔清掃状況に問題がある場合が多く、また様々な薬剤服用などによりドライマウス、粘膜萎縮、う蝕多発性、歯肉増殖傾向など、様々な口腔内の不都合がみられ、元来一般歯科開業医がルーティンで行っている歯科治療上のマネージメント以外で考慮しなければならない点が多い。その状態を十分にくみ取り、設定したゴールへ向かって取り組んでいかなければならない。
今回は問題点を具体化して提示する。
【障害者歯科の問題点】
1.アクセスの困難さ・ 体制の不備
障害者歯科へのアクセスが困難な地域が多く存在している。特に地方や農村地域では、専門的な障害者歯科医療を提供する施設が限られており、患者さんが遠方まで通院しなければならないケースもある。交通機関や施設のバリアフリー化の不足が、アクセスの問題を深刻化させている。
2.専門知識とスキルの不足
障害者歯科は一般的な歯科医療とは異なるケアが求められる分野であり、特殊な知識とスキルが必要である。しかし、歯科医師や歯科衛生士、歯科技工士の教育において、障害者への適切なアプローチを学ぶ機会が不足している。その結果、障害者への適切な治療やケアが行われない場合がある。
3.経済的負担
障害者やその家族にとって、専門的なケアを受けることは経済的な負担が大きい場合がある。特に、長期的な治療や補綴を必要とする障害者の場合、高額な治療費がかかることがある。保険制度の充実や医療費のサポートが不十分なため、適切な治療を受けることが難しい。
4.認知度と啓発の不足
障害者歯科の重要性や必要性に対する認識が不十分な場合がある。一般の人々や医療関係者に対して、障害者の口腔健康に対する理解を深める啓発活動が不十分なため、障害者の口腔の健康に関する問題が見過ごされることが多い。
5.長期化する待機期間
特にアクセスの困難な地域や施設では、障害者歯科の受診に長期の待機期間が発生する。この待機期間中に症状が悪化するケースもあり、早急な治療が必要な障害者の場合には深刻な問題となる。
これらの問題点を解決し、障害者の口腔の健康を向上させるためには、地域に根ざした適切な障害者歯科の設備整備や医療スタッフの育成が必要である。また、保険制度の見直しや啓発活動を通じて、障害者歯科へのアクセスや理解を促進することが重要である。さらに図が示すように行政、地域コミュニティとの協力体制を作り、医療と福祉と双方に関わる多職種と協調、協力しながら、包括的な支援体制を構築し、多面的なアプローチをすることで、障害者の口腔の健康向上と生活の質の向上に寄与できると考えられる。
次回は、具体的な対応方法につき、提示する。
(つづく)