医師の働き方、雑感。

愛知保険医新聞2022年11月25日号掲載

天白区 吉岡 モモ

先日、医学生時代からの友人がフリーの医師として働いているということを聞いた。目指していた専門医は取得したようだが、勤務先と折り合いが悪くなり退職、その後はパートを掛け持ちして今の勤務スタイルになったとのこと。週に数日働くだけで自分と同じかそれ以上の収入があるということはなかなか複雑な思いだったが、本人にとってはそうせざるを得ない事情だったわけだし、またいつかどこかで常勤医として働くのかなと勝手に思い込んでいた。しかしその友人は「まだそれは考えられない」ときっぱり。ひっそりとサウナ屋をしようと計画中だそうだ。自分の中での価値観が揺らぎ、なんて素敵な生き方なんだと思った。

その友人からは、ネットでは「泥医」あるいは「ドロッポ医」などという呼び名があることも教えてくれた。自虐的な言い方や他医からの侮蔑としての呼び名だということもかなりの衝撃だったが、これはとても大切な何かが象徴されているような気がした。

最近では卒後臨床研修が終わるとすぐ「起業」する人もいて、臨床医や研究医とは違う、新しい働き方の医師が増えてきている。育児や介護、持病という理由でパートや時短で働くことも以前よりもずっとやりやすくなってきている。自分の周りでもそういう人を見聞きするようになったためか、昨今の「働き方改革」はますます医師の多様性やジェンダーの視点が重要になっている。大学の医局人事や開業も一筋縄ではいかない難しい課題が増えるだろうと感じる。私も気がつけば管理者になってしまったので、今後の病院の存続のためにはあれこれ悩む日々である。

何はともあれ日本は勤務医不足であることは否定できないし、国民が求めている医師養成をせずに病床数をひたすら減らすことしか考えていない政策にきっぱりと反対意見を言うことがこれからも大事だと思う。

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