中区 野垣 敬
「戦争を知らずに僕らは生まれた、戦争を知らずに僕らは育った」
戦後72年余、72歳以下の日本人は全て戦争を知らない。この間戦死した日本人はいない。
戦争で人を殺した日本人もいない。世界の中で72年間戦争を知らなかった国は極めて少ない。日本史を振り返っても、72年間平和が続いたことは、江戸時代を除けばほとんどない。
なんと幸せな時代に私たちは生きてきたのだろうか。この事実にもっともっと感謝し喜ぶべきだろう。
しかし今、この不戦の時代を変えようとする動きが強まっている。九条改憲である。
九条改憲は、どう言いつくろおうが、自衛隊を海外派兵し、戦争できる体制作りに他ならない。
国民の中で、自衛隊は災害救助などで献身的に活躍しており、憲法上できちんと評価すべきだという声がある。だが憲法九条に加憲することは、自衛隊員にとって悪夢の始まりである。日本を守るために志願したはずが、いつのまにかアラブやアフリカで、アメリカのための戦争に駆り出されかねない。そしてそれは全ての日本国民にふりかかってくる。
現行法制では、海外派兵が決まった場合、自衛隊員は任意除隊できる。戦地に派兵されたとしても、現地で除隊しても罰則はない。しかしこれを許せばとても戦争はできない。指揮するものの立場からすれば、除隊は許さず、命令拒否には厳罰(かつて敵前逃亡は死刑だった)が必至で、法体系とは別の軍法会議が必要となる。
一方自衛隊員の確保はどうなるか。経済的優遇で志願者を募れるという意見もあるが、現実に派兵され戦死者も出ている状況となれば、入隊志望者も激減するだろう。ただでさえ出生数減少で若者が減っている現在、徴兵制は必ず施行されるだろう。戦前の日本で徴兵拒否は重罪だった。
このように九条改憲後の日本では軍法会議と徴兵制の支配する、極めて暗澹たる社会にならざるを得ない。まさに「戦争を知ってしまった不幸せな子供たち」の世界が広がる。こんな日本には住みたくない。何としてでも改憲を止め、戦争を知らない国を百年でも二百年でも続けたいと切に願う。
2018年2月7日