(愛知保険医新聞2018年11月15日号)
安倍首相は9月の自民党総裁選で三選されたが、政治の破綻と劣化は目に余るものがある。
森友・加計疑惑では、首相の嘘とつじつまを合わせるために情報の隠ぺいや公文書改ざんが行われ、このほかにも南スーダンの自衛隊日報隠しや「働き方改革」法案をめぐるデータねつ造などが各方面にわたった。各紙社説は「荒涼たる言論風景/著しい立法機能低下/行政監視果たせず」(中日新聞)、「民主主義の根腐れ」(朝日新聞)などと評する始末である。
臨時国会が始まったが、片山さつき大臣ら新閣僚6人に「政治とカネ」などに関する疑惑や問題が次々発覚している。「適材適所、全員野球内閣」と言った安倍首相の責任は逃れられない。
その片山大臣は、改造内閣の唯一の女性閣僚だが、女性閣僚がたった1人となった。「女性活躍」を掲げた看板は剥げ落ちている。
臨時国会序盤を経て、国政の各分野で安倍政権の政治の民意無視の姿勢が際立っている。
――国会開会直前に高市衆院議院運営委員長が示した国会改革案は、政府提出法案審議を優先し一般質疑を削減する内容で、国会の行政監視機能を損ねるもので、撤回・謝罪をしたが野党から総批判を浴びた。
――消費税の10%増税では、来年10月からの増税には、野党が揃って反対を表明し、「安倍首相が『消費が落ち込まないように万全の体制をとる』というなら消費税を増税しないことが最大の対策」などの批判が相次いでいる。
――外国人労働者の受け入れに関する入管法改定案は、就労できる業種・分野等は省令などで決め人数の上限も示さない白紙委任状態の法案で、法案の体をなしていないことが早くも問題になっている。長時間労働や低賃金の雇用拡大や、日本の雇用市場への悪影響が懸念される。
――米軍基地をめぐる問題でも、政府は辺野古基地建設で沖縄県が埋め立て承認を撤回したことを停止する措置で工事を再開した。先月の知事選挙で示された辺野古基地建設反対の民意に向き合わない暴挙である。
国民はこのような安倍内閣について、「評価する」が38%に対し「評価しない」45%(読売新聞、10月4日付世論調査)などと、政治不信は根深い。
日光東照宮の「見ざる言わざる聞かざる」を持ち出すまでもないが、国民に向き合い、必要な情報を素直に示して、徹底した国会審議を望む。