2018年11月29日

社会保障改革-「全世代型社会保障」は全世代負担増だ

(愛知保険医新聞2018年11月25日号)

安倍内閣は、「全世代型社会保障改革」を3年間で成し遂げるとしている。官邸主導で経済財政諮問会議や未来投資会議を主舞台に、当面は雇用年齢や年金支給開始年齢の引き上げをしつつ、高齢者などの負担増は来年参院選挙後に先送りする計画となっている。
しかし、実際には、今年8月から医療では高額療養費の負担限度額引き上げや、介護保険では現役並み所得者の3割負担化が行われ、10月からは生活保護基準引き下げなどが行われている。
6月に閣議決定した「骨太方針2018」では、今後さらに75歳以上の窓口負担2割化や、受診時定額負担などの患者負担増の計画が控えている。
「全世代型社会保障改革」は全世代負担増にほかならない。
社会保障予算は、自然増を6,000億円以下に抑える方針であり、財務省サイドからは5,000億円以下にするよう圧力も強められている。11月中にもまとめられる財政制度等審議会の建議や社会保障制度審議会医療保険部会などの議論に注意が必要だ。
「全世代型社会保障改革」では、「日本は高齢者にお金をかけすぎ。子どもの教育・保育に」などの主張があるが、現厚労事務次官の鈴木俊彦氏は、保険局長だった今年2月の講演で、高齢化率を勘案すると日本の医療・介護・年金の対GDPは先進諸国よりむしろ低い点を示して「日本は高齢者にお金をかけ過ぎていたのではない。子どもにお金をかけなさ過ぎたということだ」と強調している。そして「高齢者の負担を増やすと、高齢者の生活が沈み、助けるためのお金がかかる」とも述べている。社会保障は高齢者偏重なのではなく、全世代に渡り手薄いのが現状である。
さらに、健康格差、経済格差が小さい国の方が経済成長率は高いというOECDの実証分析もある。社会保障削減が経済成長の足も引っ張る構造は改められなければならない。
一方、経団連は、法人実効税率が高すぎるとして引き下げるよう要求しているが、日本医師会の横倉会長は「社会保障の抑制策を考える前に、まずは446兆円超にも上る企業の内部留保を活用して国の財政に寄与するような提言をすべきだ」(9月10日)と批判している。保団連は、内部留保活用をはじめ、「法人税課税を先進国並みに」「所得に応じた課税に」などの社会保障財源提案をしており、この実現が求められる。

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