(愛知保険医新聞2018年5月25日号)
診療報酬が改定されてから1カ月以上が経過した。
今回の改定は、「社会保障と税の一体改革」「骨太方針2015」の方針に基づいて、前回・前々回に続き公称1.19%のマイナス改定となった。その限られた財源のもとで、医療機関全体の底上げとなる初再診料や入院基本料などの点数は引き上げられなかった。
また今次改定は、団塊の世代が75歳を越える2025年に向けて実質最後の診療報酬・介護報酬の同時改定との位置づけがされ、政府の政策的な誘導が露骨に表れた改定ともなった。それは、医療への国の支出を抑えるために入院点数を病床機能別に再編し、アウトカム評価の要件を強化するなど、入院施設から在宅への流れをより強めるというものである。そしてその受け皿として、開業医には「かかりつけ医」機能として、外来医療・在宅医療の体制整備を求め、地域包括ケアシステムの構築、医療機能の分化・強化を推し進めるという内容である。その他、維持期リハビリの廃止やオンライン診療など、国の方針を強引に進める改定は、医療現場に負担と混乱を強いるものとなっている。
こうした改定内容の問題に加えて、協会が十分な周知期間を求めてきたにもかかわらず、今回もまた四月実施までの周知期間がほとんどなく、ギリギリのスケジュールで改定が実施された。改定内容を理解し新点数による保険請求を円滑に行うことが必要な医療機関に、過重な負担を強いていることも大きな問題である。
こうしたもとでも、協会や保団連が要望してきた診療報酬の改善が実現したものもある。創傷処置「1」の引き上げ、鶏眼・胼胝処置の算定回数の緩和、複数医療機関による訪問診療の評価、歯科医療機関からの求めに応じた診療情報連携共有料の新設などである。
協会が4月下旬に開催した医科の運用説明会では、「医療従事者の賃上げのためにも診療報酬の引き上げを」「施設基準の強化で病床の存続が難しくなる」「在宅医療点数が療養場所や同一建物等で異なるのは不合理」「薬剤の一包化の評価を設けてほしい」「改定のたびに複雑になる。現場にわかりやすい改定を」など、改善を求める意見が寄せられた。
協会では、会員からの意見などを集約し、診療報酬改定の引き上げや抜本的な改善とともに、今回の改定による新たな不合理も含め、診療報酬改善を求めて運動していく。