2018年5月17日

歯科診療報酬改定-多職種連携に歯科の出番

(愛知保険医新聞2018年5月5・15日合併号)

6年に一度の医療・介護同時改定の中、今次歯科診療報酬の改定を保険医の立場からどう見ていけばよいのだろうか? 一カ月が経過し4月分請求を纏め、様々な思いが駆け巡ると思う。まず目につくのは、外来診療の院内感染防止対策と称して基本診療料(初診料・再診料)への施設基準を設けたことだ。届け出て初診料わずか3点増、届けなければ8点減算、こんな理不尽は許せない。また、2年の猶予があるとはいえ、か強診・歯援診の施設基準を維持するうえで、様々な実績が求められている。さらに咀嚼能力検査、咬合圧検査、口腔粘膜処置におけるレーザー機器加算など、施設基準を満たすために機器を揃えなければならない。中には高額なものもある。そうやって設備投資をすることで算定ができ、増点しての結果が、歯科診療報酬本体プラス0.69%である。これでは資金繰りに苦しむ歯科診療所が増えてきても不思議ではない。
限られた財源での改定では、プラス改定と言っても名ばかりとなる。歯科医療費の総枠拡大なしには、実質的なプラス改定は実現しない。
ところで、今回の改定では、超高齢社会の中、国民が求める健康寿命の延伸において歯科の果たす役割が評価された部分もある。口腔は細菌の入り口、病の入り口であり、糖尿病において歯周病はコインの裏表であるが、医師は口の問題に気づきにくい。認知症には診断早期から歯科が介入すべきとの見解も出ている。入院患者に歯科が系統的に関わるケースはまだ少ないが、摂食嚥下障害の患者さんに歯科の食支援が求められる時代になった。がん終末期の緩和ケアに歯科が介入することの重要性も分かってきた。
まず医科歯科連携を充実させる第一歩として、新設された診療情報連携共有料を利用して来院する患者さんの全身像の把握に努めたい。口の些細な衰えを見逃さずに早く対処するオーラルフレイル予防の取り組みの重要性も注目されている。小児や65歳以上の患者さんへの口腔機能管理の視点も導入された。骨粗鬆症の方は、人口の一割とも推測されており、骨折予防の服用薬剤と歯科治療の関係は軽視できない。また身近なところでは、通院していた患者さんが要介護状態になるなどして、訪問診療に移行した場合の評価も新設された。今まで以上に、来院が途絶えている方に連絡を取り、様子を知ることが大切になってくる。ケアマネジャー等と連絡を取り、多職種連携の第一歩を踏み出そう。

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