介護保険
要請項目~安心できる介護保障について(抜粋)~
○介護保険料・利用料など
・第九期介護保険事業計画を待たずに、介護保険料を引き下げてください。また、保険料段階を多段階に設定し、低所得段階の倍率を低く抑え、応能負担を強めてください。とりわけ、第一段階・第二段階は免除してください。
○基盤整備
・特別養護老人ホームや小規模多機能施設等、福祉系サービスを増やし、待機者を早急に解消してください。
○障害者控除の認定
・介護保険のすべての要介護認定者を障害者控除の対象としてください。
・すべての要介護認定者に「障害者控除対象者認定書」または「障害者控除対象者認定申請書」を自動的に個別送付してください。
介護保険料の引き下げを
介護保険は、3年に1度、自治体ごとに定める介護保険事業計画の見直しが行われる。介護保険料はそこで位置付けられるため、保険料の見直しも原則として3年に1度行われることとなる。2021年4月に行われた見直し(第8期介護保険事業計画)における愛知県内の平均保険料(基準月額)は5,732円で前期から二百六円(3.7%)の引き上げとなった。県内で一番高い保険料を設定したのは前期に続いて名古屋市で6,642円だ。
前期から保険料を引き下げたのは5市町村(県内自治体の9%)、据え置いたのは15市町村(同28%)だったのに対し、引き上げたのは34市町(同63%)と県内の3分の2に迫る自治体が値上げを行った。県平均の介護保険料は介護保険のスタート時(愛知県平均2,737円)と比べて2倍を超える保険料になっている。
介護保険料が上がり続けている根本的な原因として、介護保険財政全体における負担割合が固定されている(国が25%、都道府県が12.5%、市町村が12.5%、被保険者が50%)という問題がある。このため、介護保険の利用が増えるとそれが保険料の引き上げに直接繋がることとなる。これ以上の保険料引き上げをさせないためにはこの仕組みの見直しが欠かせない。
一方で、保険料を払っていても、利用料を払うことができないために介護保険が利用できないという事例が多数発生していることから、国の制度見直しを待つことなく、各自治体の努力で保険料を引き下げることが緊急に求められている。愛知自治体キャラバンでは、第七期末に残っている保険料(介護給付費準備基金)については、全額を第8期の保険料引き下げに使うよう要望した。自治体からの回答を見ると、全額活用していない自治体が全額活用した場合、13市町村で保険料月額を500円以上引き下げることができることが分かった。2024年の次期計画を待つことなく、保険料引き下げを行うことを強く求めたい。
無理なく払うことができる保険料に少しでも近づけるためには、所得に応じて保険料段階を多段階化し、高所得者の保険料を引き上げる一方、低所得者の保険料を引き下げることで応能負担の機能を強化することが必要だ。保険料段階は、国が示す基準(9段階)よりも、県内の全自治体が多段階を採用している。最多は17段階(高浜市・津島市)、最少は10段階(北名古屋市・豊山町)。
医療保険の協会けんぽの保険料段階は50段階に設定されており、介護保険の段階数はまだまだ少ない。今後、さらなる多段階化等で応能負担の強化を求めることも重要な課題となる。
その他にも、低所得者への保険料減免は29市町村(同54%)、利用料減免は20市町村(同37%)が独自に実施している。これらの制度についても未実施の自治体には、制度創設を求めたい。
特養などの拡充は急務
自治体からのアンケート結果を見ると要介護3以上の特別養護老人ホームの入所待機者数は2019年11,149人→2020年9,942人→2021年9,099人と徐々に減少している。しかし、要介護1・2の待機者も合わせると、依然として県内で1万人を超える待機者がある。今後、団塊の世代が75歳を超える2025年や高齢者人口が増加し続ける2040年に向けて、要介護認定者も増え続けると予測されており、介護需要はさらに高まる。
ところが、各市町村が第8期介護保険事業計画で示した特養の整備目標は県内の合計で1,168人分と極めて少なく、待機者の解消には程遠いものとなっている。各自治体には、待機者解消のための積極的な計画策定を求めたい。同時に、整備が進まない大きな理由として人材不足があることから、国を先頭にした抜本的な整備強化が求められる。
障害者控除認定のさらなる活用を
障害者手帳の所持に関わらず、要介護認定者を市町村長が税法上の障害者と認めた場合、障害者控除を受けることができる。県内でも多くの市町村が要介護者を「障害者等に準ずる」とし、障害者控除の対象としている。自治体キャラバンで要望を始めた2002年には県内の合計で3,768枚だった障害者控除認定書の発行枚数は毎年増え続け、今では68,000枚を超えている。
今回調査を行った2020年5月現在の発行枚数は、68,131枚で前年(68,867枚)から若干減少した。これは、瀬戸市が要介護者への認定書の自動送付を止めたことによるもので、瀬戸市の発行枚数が約4,000枚減少していることを勘案すると全体としては、さらに制度の活用が進んでいる。
概ね要介護1以上に認定書を発行している自治体は、新たに蒲郡市が増え44市町村(県内自治体の81%)となった。また、要介護認定者に自動的に認定書を送付している自治体は、瀬戸市が送付を止めたが、蒲郡市が新たに開始したため28市町村(同52%)と引き続き、半数を超えている。
新たに認定書を受け取った人が、障害者控除で税と保険料の負担が136,000円(住民税7.4万円、所得税4.3万円、介護保険料1.9万円)軽減される例も生まれており、障害者控除認定による住民への恩恵は計り知れない。
瀬戸市は拡充の流れに逆行するかたちで、県内ではじめて要介護認定者への認定書の自動送付を中止した。中止前には5,277枚あった認定書の発行数が中止後に1,272枚に激減している。今後、認定書の発行を受けるためには申請が必要となることから、申請漏れによって障害者控除を受けることができる人が控除を利用できないことが多数生じる可能性がある。瀬戸市には、直ちに認定書送付中止を撤回するように求めたい。
要介護認定者への障害者控除認定書発行の前進は、自治体キャラバンでの継続的な要請や地域住民の粘り強い働きかけ、自治体担当者の努力が生み出した貴重な成果だと言える。未実施の市町村には要介護認定者への障害者控除認定書の自動送付を強く求めたい。