歯科診療報酬改定情報(3)
11月30日に開催された中医協総会では歯科医療についての議論が行われた。なお、既報の通り、在宅歯科医療については別途項目がたてられて議論されているため、今回は在宅歯科医療以外の部分について検討されている。
総会では、議論に先立って事務局(厚労省保険局医療課)から改定に向けた論点整理が行われ、(1)高齢者等に対する安心で安全な歯科医療の提供について、(2)障害者に対する歯科医療について、(3)周術期の口腔ケア等、チーム医療の推進について、(4)歯や口腔機能を長期的に維持する技術等について(歯周病)、(5)歯科用語の平易化等について――の5点が検討項目としてあげられた。
医管・外来管について見直しを検討
「高齢者等に対する安心で安全な歯科医療の提供について」では、歯科治療総合医療管理料(医管)の対象疾患に、がん治療で放射線治療や化学療法を受けた患者やビスホスフォネート系製剤服用者等を追加すること、歯科外来診療環境体制加算(外来管)について、現在初診時のみ算定できるルールであるが、再診時についても評価を検討することがあげられた。なお、外来管については、「財政影響も考慮しつつ初診時の外来管を見直す」ともされており、再診時の評価と併せて、初診時の加算を引き下げることも検討される可能性が高い。
専門医療機関から開業医への紹介に関する評価を検討
「障害者に対する歯科医療について」では、障害者歯科医療連携加算(障連)と障害者加算が検討項目にあがっている。
障連は一般の歯科医療機関から専門性の高い歯科医療機関に紹介を行った場合に専門性の高い歯科医療機関で初診料への加算として算定できるもの。これを見直し、専門性の高い医療機関から一般の歯科医療機関への紹介についても評価を検討するとしている。
障害者加算は著しく歯科診療が困難な障害者の治療を行った場合に初・再診料への加算として算定できるもの。現在の算定要件は、(1)脳性麻痺などで身体の不随運動や緊張が強く体幹の安定が得られない状態、(2)知的発達障害により開口保持ができない状態や、治療の目的が理解できず治療に協力が得られない状態、(3)重症の喘息患者で頻繁に治療の中断が必要な状態、(4)(1)~(3)に準ずる状態――のいずれかに該当する場合である。(4)については、その運用にばらつきがあることから、「著しく歯科診療が困難な状態」という基本的な考え方を堅持しつつ、「症状の重い認知症」を明示することを検討する。また、障害者加算は、「状態」に注目したものであり、「障害者加算」という表現は必ずしも正確ではないとして、名称の見直しも併せて検討されている。
周術期の口腔ケアの評価を検討
「周術期の口腔ケア等、チーム医療の推進について」では、入院前後の口腔ケアとして、病院と連携して歯科医療機関が口腔ケアを行うことについて、医管の対象疾患に「周術期の患者」を加えることで評価することが検討されている。また、歯科標榜のある病院についても、入院期間中の対応についての評価が検討されている。
SPTの算定要件を見直し
「歯や口腔の機能を長期的に維持する技術等について(歯周病)」では、歯周病安定期治療(SPT)の算定要件見直しが検討されている。現在のSPTは、歯周外科手術を実施した場合のみ前回実施から3カ月以内でも算定できることとされているが、歯周病の悪化・重症化リスクが極めて高い患者(糖尿病患者など)についても歯周外科手術を実施した患者と同様の扱いとすることが検討されている。また、事務局の提出した資料の中には、今後の方向性について「他の治療の評価も含め、歯周治療の一連の評価のバランスをどのように考えるか」との表現もあることから、歯周治療についての評価見直しが行われる可能性もある。
用語の平易化
「歯科用語の平易化等について」は、前回2010年改定で患者からみて難解な用語の見直しとして行われていたもので、引き続く課題としてあげられている。前回改定時には、歯髄覆罩を歯髄保護処置、床裏装を有床義歯内面適合法などの変更が行われており、今回の改定でも用語見直しが行われる可能性が高い。
診療報酬改定については、今後年末までに内閣で改定率が決定され、年明け以降に諮問・答申が行われる。