2023年度の個別指導における指摘事項(医科)(1)

 東海北陸厚生局管内の6県(愛知県・岐阜県・三重県・静岡県・石川県・富山県)で2023年度(令和5年度)に実施された個別指導において指摘された事項が、厚生局のホームページに掲載されている。診療録の記載や保険請求の算定ルールなど日常診療で留意しておきたい内容(一部改変)を掲載(全6回)するので、確認されたい。

Ⅰ 診療に係る事項
1 診療録の記載等
(1)診療録は、保険請求の根拠となるものなので、医師は診療の都度、遅滞なく必要事項の記載を十分に行うこと(特に、症状、所見、治療計画等について記載内容の充実を図ること)。
(2)診療録への必要事項の記載について
(ⅰ)医師による日々の診療内容の記載が全くない日が散見される。
(ⅱ)医師による日々の診療内容の記載が極めて乏しい。
(ⅲ)傷病手当金に係る意見書を交付した場合であるにもかかわらず、労務不能に関する意見欄への記載がない。
(ⅳ)診療録第3面(保険医療機関及び保険医療養担当規則様式第一号(一)の3)に患者から徴収する一部負担金の徴収金額が適正に記載されていない。
(3)紙媒体の記録について
(ⅰ)記載内容が判読できない。
(ⅱ)診療を担当する保険医の署名又は記名押印が診療の都度なされていないため診療の責任の所在が明らかでない。
(4)保険診療の診療録と保険外診療(予防接種)の診療録とを区別して管理していない。
2 傷病名
傷病名は診療録への必要記載事項であるので、正確に記載すること。
(ⅰ)傷病名の記載又は入力について
ア  傷病名を診療録の傷病名欄から削除している。
イ  傷病名の開始日・終了日及び転帰の記載がない。
ウ  傷病名の記載が漏れている。
(ⅱ)傷病名の内容について
ア  医学的な診断根拠がない傷病名
イ  医学的に妥当とは考えられない傷病名
ウ  実際には「疑い」の傷病名であるにもかかわらず、確定傷病名として記載している。
エ  実際には確定傷病名であるにもかかわらず、「疑い」の傷病名として記載している。
オ  急性・慢性の記載がない傷病名
カ  左右の別の記載がない傷病名
キ  部位の記載がない傷病名
ク  具体的(適切)でない傷病名(単なる状態、症状を傷病名欄に記載している)
(ⅲ)検査、投薬等の査定を防ぐ目的で付けられた医学的な診断根拠のない傷病名(いわゆるレセプト病名)が認められた。レセプト病名を付けて保険請求することは、不適切なので改めること。診療報酬明細書の請求内容を説明する上で傷病名のみでは不十分と考えられる場合には、摘要欄に記載するか、別に症状詳記(病状説明)を作成し診療報酬明細書に添付すること。
(ⅳ)傷病名を適切に整理していない例が認められた。
ア  長期にわたる「疑い」の傷病名
イ  長期にわたる急性疾患等の傷病名
ウ  重複して付与している、又は類似の傷病名
エ  転記について、治癒とすべきところを中止としている。
オ  転帰の記載がない傷病名
カ  その他、傷病名の整理がされていないため傷病数が多数となっている。
(ⅴ)主傷病について
ア  主傷病名は原則1つとされているところ、多数の傷病を主傷病名としている。
イ  主傷病名ではない傷病名を主傷病名としている。
ウ  主傷病名と副傷病名を区別していない。(主傷病名に該当する傷病名が区別されていない)
3 基本診療料(入院関係は略)
(ⅰ)初診料・再診料
ア  初診又は再診に附随する一連の行為で来院した場合には、これらに要する費用は当該初診料又は再診料に含まれ、別に再診料を算定できないにもかかわらず算定している。
イ  電話等による再診について、再診以後、当該患者又はその看護に当たっている者から直接又は間接に、治療上の意見を求められて、必要な指示を行った場合に該当しないものに対して算定している。
ウ  診療情報提供書のみを受け取りに来院した際に算定している。
(ⅱ)時間外加算及び休日加算
ア  時間外加算及び休日加算について、医療機関の指示・都合により、対象となる時間帯に診療を開始した患者について算定している。
イ  時間外加算について、常態として診療応需の態勢をとっている時間に算定している。
ウ  夜間・早朝等加算について、受診時間が該当しない。
(ⅲ)外来管理加算
ア  患者からの聴取事項や診察所見の要点に関する診療録への記載がない又は不十分である。
イ  患者本人が受診せず、患者の家族が来院した場合に算定している。
ウ  外来管理加算について、問診と身体診察(視診、聴診、打診及び触診等)が行われていない。
エ  電話再診時に算定している。

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