新たに10自治体が助成開始
保険医協会地域医療部は、2024年4月1日時点での難聴高齢者補聴器購入費助成事業、妊産婦医療費助成事業、産婦健診助成事業の実施状況を調査し、県内全自治体から回答を得た。その結果を報告する
高齢者補聴器助成実施は16自治体に
補聴器購入費の助成は、障害者手帳があれば、障害者総合支援法に基づく補装具費支給制度で受けることができる。しかし、障害者手帳の発行を受けられるのは、両耳の聴力が70デシベル以上の高度・重度難聴者に限られ、軽度や中等度ではこの助成を受けることができない。
WHO(世界保健機関)では41デシベルの中等度難聴から補聴器使用を推奨しており、軽度や中等度への助成制度創設が求められている。
今回の調査で新たに岡崎市、一宮市、豊田市、江南市、小牧市、東海市、豊明市、みよし市、扶桑町、武豊町の10自治体が助成を開始した(予定含む)。県内で助成制度がある自治体は16自治体となった。
助成対象者では、8自治体が住民税非課税世帯のみを対象にしており、課税世帯への対象拡大を求めたい。
補助額は非課税世帯で、購入費用の半額(上限2万円~5万円)で実施している。また、課税世帯も対象にしている自治体では、課税世帯で購入費用の半額(上限1万5千円~2万5千円)を助成している。
高額な補聴器に対する公的補助を求める声は多く、政府に公的補助制度創設を求める請願署名の取り組みなども各地で広がっている。協会では国や自治体に対して助成制度創設を求めていく。
妊産婦医療費助成6自治体が助成
妊産婦医療費助成制度は妊産婦が費用の心配なく医療を受けることができるよう、窓口負担の助成をする制度である。
全国的には、青森県(国保)、岩手県、栃木県、茨城県、富山県の5県で県制度で実施。新潟県は県の補助なしに全市町村が実施。
今回の調査で、愛知県内で助成を実施しているのは東海市、東浦町、南知多町、美浜町、武豊町、設楽町の6自治体だった。
いずれも所得制限や自己負担なしで行われている。
昨今の晩婚化の傾向で、高齢妊娠や合併症を有する妊婦など、保険診療を受ける妊産婦が増えている。成育基本法が掲げる成育医療等を切れ目なく提供するためにも、妊産婦医療費助成制度の創設・拡充が求められる。協会では、今後も同制度の創設・拡充を国・県・市町村に求めていく。
産婦健診 2回助成が7割超
日本産婦人科医会によると、産後うつは産婦の10人に1人以上に見られ、自殺や虐待、子どもの発達などに影響を及ぼす。産後うつの発症時期は産後1カ月頃が最も多く、自宅に戻ってから発症する母親が多い。そのため、本人からケアを求めることがほとんどなく、医療保健従事者側から積極的にスクリーニングして働きかける必要がある。
愛知県では2019年からすべての自治体で産婦健診の助成を実施するようになった。
今回の調査で、助成回数を2回としている自治体は8自治体増え41自治体(県内自治体の76.0%)となった。
産後うつは早期発見、早期治療が求められることから、産婦との接触の機会を増やすことが何よりも重要である。各自治体では産婦健診だけでなく様々な形で接触機会を増やす努力がされている。
産婦健診には国が健診費用の2分の1を2回まで補助する制度があることから、すべての自治体に少なくとも2回の助成を求めたい。