2017年9月16日

武器を持たない平和政策を

東海市 岩間 正文
 東アジアの情勢は不穏です。傍若無人な北朝鮮の指導者は核実験を繰り返し、中国の海洋進出はあらわ、米国は強硬な姿勢をくずしません。緊張の度合は高まるばかりです。こんな時だからこそ憲法九条の意義が問われます。
 日本は戦後長らく和平を維持してきました。そのバックボーンが戦争を放棄する第九条です。70年前に制定され、ベトナムやイラク戦に派兵しなくてよかったわけです。アメリカの同盟国でありながら、要請を拒むことができました。協同路線をとりつつ、死者をださない盾の役目を果たしました。
 安倍首相は九条に第三項として自衛隊の存在を明記しようとしています。それでは一、二項の交戦しない基本線があいまいになります。軍隊化する可能性が潜み、米艦隊が襲われた際、武器を持って協力する事態へ進むかも。国民はとても受け入れないでしょう。五月に首相が述べた、「現行の憲法はみっともない」という発言に私は異議を唱えます。
 現在の日本の平和バランスは、日米安保条約と九条が対をなします。憲法はマッカーサーと当時の幣原首相との話し合いで生まれました。決して米国から押し付けられたのではありません。これをしっかり守り、自衛隊は地雷の撤去、救援物資の輸送、土木工事などの復興、後方支援に重きをおくべきです。国際社会に対する不戦のメッセージを保持しなければなりません。
 最近の政策決定過程は強引です。典型的な例は共謀罪の成立です。参議院の委員会採決を飛ばして中間報告ですませました。一般人の逮捕につながりかねません。数年前本紙が特集号でとり上げた映画、「母べえ」を思い出しました。軍国に反対した吉永小百合の夫が獄死するシーンに涙しました。この治安維持法も、はじめは特定の人であった対象が拡大解釈されていったのです。
 むろん成熟した現代社会では、戦前のような弾圧は行われませんが、自民党の結果を急ぐ方針はリスク大です。憲法はあくまで国民のものです。「五輪の年に新法実施」を語ってから、首相に対する世論は厳しいものがあります。先の都議選でコールド負けし、支持率は危険水域に低下しています。これからどのように改憲するか、内容に注目しなければなりません。三項の明文は未定ですが、丁寧に謙虚に議論を進めてほしいと思います。武力、暴力とは無縁の、インドのガンジーに近い平和主義を望みます。

ページ
トップ