4月1日から雇用保険料率が段階的に引き上げ―労働者負担は10月から
「雇用保険法等の一部を改正する法律案」が3月30日に国会で成立しました。このため、現在、労使で賃金の計0.9%を負担している雇用保険料率が今年四月から0.95%に、10月から1.35%へと段階的に引き上げられます(下表)。
事業主が負担する「雇用保険二事業」は現在の0.3%が4月から0.35%に、労使折半で負担する「失業等給付」は現在の0.2%が10月から0.6%となります。
今後の実務
4月からの料率変更は事業主負担分のみの引き上げであるため、労働者の給与から天引きとなる雇用保険料には影響はありません。一方、10月からの料率変更では労働者負担分も引き上げられるため、給与計算時に注意が必要となります。
また、年度更新時の概算保険料の計算でも注意が必要です。2022年度は年度内に料率変更が行われるため、概算保険料も料率変更に合わせた算出が必要となります。
具体的には、2022年4月1日から9月30日までの概算保険料額と、10月1日から2023年3月31日までの概算保険料額をそれぞれ計算し、これらの合計額を2022年度概算保険料として申告・納付しなければなりません。
国庫負担割合の正常化が必要
今回の雇用保険料引き上げは新型コロナウイルス感染症の影響により、雇用保険を財源とする雇用調整助成金の支出が膨らんだことによる、財政の立て直しなどが理由に挙げられていますが、コロナ禍で疲弊している事業主と労働者にさらなる負担を強いることになります。
そもそも、法律上の国庫負担割合は原則25%(失業等給付の基本手当)とされています。しかし、2007年の法改正による暫定措置で13.75%とされ、2017年の法改正の後は2.5%という極めて低率の負担になっています。国庫負担割合を本則通り25%に戻すことが必要です。
雇用保険には失業者の生活を守るとともに、雇用の安定、労働者の福祉の増進などの目的があります。協会は2022年2月18日に「国庫負担割合を元に戻し、雇用保険料率の引き上げ法案の撤回を求める要請書」を提出し、雇用保険制度の拡充を求めました。