2022・歯科診療報酬改定情報7

施設基準の変更と経過措置など

 3月4日に告示・通知が発出され、今回の改定内容が確定した。疑義解釈などを待たなければ不明な点や、訂正通知なども出される場合があるが、順次ポイントを紹介していく。今回は施設基準の変更と経過措置を中心に解説する。

新基準の研修を受けている場合は4年間有効―院内感染対策


 院内感染防止対策(初診料注1)の施設基準に関して、必要とされる研修内容が「標準予防策および新興感染症に対する対策」とされ、経過措置期間が設けられている(下図)。ポイントは、届出や受講の時期によって、(1)旧基準の受講で2023年3月31日まで、(2)旧基準の受講から2年間、(3)新基準の受講から4年間、と有効期間が違うことである。自身がどこに当てはまるか確認の上、7月の定例報告の際、期限切れとならないよう注意が必要である。なお、新規で届出を行う場合、研修の修了証などの添付は不要とされた。
 同施設基準では、職員を対象とした研修にも「標準予防策」に加え、「新興感染症に対する対策」が必要となった。こちらも七月に実施の報告を行う。  

歯援診の実績要件が変更―1に経過措置


 在宅療養支援歯科診療所(歯援診)の施設基準も変更された。歯科訪問診療料の実績要件のうち、過去1年間の歯科訪問診療1・2の合計回数が、歯援診1の場合は、「15回以上」から「18回以上」に、歯援診2の場合は「10回以上」から「4回以上」とされた。歯援診1の届出要件が厳しくなり、歯援診2は緩和された。
 届出のハードルが上がった歯援診1には、経過措置が設けられている。2022年3月31日までに歯援診1の届出を行っている医療機関は、2023年3月31日までは基準を満たしているものとみなされる。2023年4月以降に、歯援診1を継続する場合、歯援診2に変更する場合は、経過措置期間終了までに、再度届出を行う必要があるので注意が必要である。また、歯援診1の施設基準では、過去1年間に在宅医療を担う他の医療機関、介護保険施設などからの依頼による歯科訪問診療の実績が5回以上であることが求められるが、依頼元に「保険薬局」が追加された。
 歯援診2については、要件が緩和されたため、経過措置はない。

か強診は実績要件の緩和など


 かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)も、施設基準の実績要件が変更された。これまで「過去1年間に歯周病安定期治療(SPT)ⅠとⅡをあわせて30回以上算定していること」が求められたが、4月以降は「SPT(Ⅰ・Ⅱが統合された)と歯周病重症化予防治療(P重防)」の合計回数が30回以上とされた。「P重防」の算入が可能となり、要件が緩和された。
 また、「過去1年間に居宅療養管理指導を提供」、「地域ケア会議に1回以上出席」など11項目のうち3項目を満たす必要があった要件に、過去1年間に障害児入所施設や老人保健施設などの「定期的な歯科健診に協力していること」が加えられ、選択肢が12項目に増えた。

その他の施設基準


 その他の施設基準について、廃止や新設された項目がある。
 新設されタCAD/CAMインレーは、施設基準の届出が必要となる。ただし、2022年3月31日時点で、CAD/CAM冠の届出をして「算定実績がある」場合は、あらためて届け出る必要はないとされている。届出をしているだけでは足りず、算定の実績がなければいけないので注意が必要である。なお、あらためて届出の必要がない場合でも、院内掲示物の名称などを変更しなければならないので、これにも注意していただきたい。
 歯科治療を行う際、医科医療機関からの情報提供にもとづき、総合的医療管理が必要な患者に対して、外来では歯管への総合医療管理加算(総医)の、歯科訪問診療では歯在管への在宅総合医療管理加算(在歯総医)の施設基準が廃止され、すべての医療機関で総医、在歯総医の算定ができるようになった。ただし、医科医療機関から文書で情報提供を受けること、患者に対し療養上の指導や適切な総合医療管理を実施するという要件に変わりはない。なお、全身的管理が必要な患者に対して、血圧、脈拍、経皮的動脈血酸素飽和度を経時的にモニタリングして医療管理を行う歯科治療時医療管理料(医管)、在宅患者歯科治療時医療管理料(在歯管)は、引き続き施設基準の届出が必要なので注意が必要である。
 処方料への外来後発医薬品使用体制加算(外後使)の施設基準が変更された。後発医薬品の使用割合が、外後使1は「85%」から「90%」に、外後使2は「75%~85%未満」から「85%~90%未満」に、外後使3は「70%~75%未満」から「75%~85%未満」にそれぞれ引き上げられている。すでに届出をしている医療機関も、新たな使用割合を記載して届出をし直す必要がある。なお、後発医薬品の販売事業者が業務停止命令を受けたことなどに伴い、2022年9月30日まで、一部の製品を計算の対象から除外できる。
 新設されたNi―Tiロータリーファイル加算を算定できるのは、手術用顕微鏡加算(手顕微加)の施設基準を届け出た医療機関に限られるので注意が必要である。
 今回紹介したものに限らず、新たに届出をする施設基準、届出をし直す施設基準については、4月20日までに届出を行い、4月末日までに審査を経て受理された場合、4月1日に遡って算定することができる。

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