歯科診療所における 労災診療の取り扱いについて

歯科診療所における 労災診療の取り扱いについて

 労災は指定医療機関においては、患者から窓口徴収をすることなく医療機関から請求を行う。しかし、歯科医院の場合は、ほとんどの医療機関が指定を受けていないので、窓口で全額を一旦徴収し、患者が事業所を通じるなどしてかかった医療費を労災保険に請求することとなる。非指定医での取り扱いを中心に以下にまとめた。
 なお、各労働基準監督署の連絡先については、「歯科保険診療の要点2020年8月版」P.338を参照いただきたい。

1.非指定医での窓口の取り扱い
 治療費は窓口で全額徴収する。患者は支払った医療費を労働基準監督署に請求する。
 患者が持参する様式第7号「療養の費用請求書」(歯科保険診療の要点2020年8月版P.339参照)に証明し、明細書は7号様式の裏面は使用せず、歯科用「労災療養費明細書」(同P.340参照)を添付する。明細書を患者が持参しない場合は各労働基準監督署にあるので取り寄せる。なお、通勤災害の場合の請求書は、様式第16号の5「療養の費用請求書(通勤災害用)」を使用する。

2.非指定医における治療費の留意点
 非指定医の場合、あくまでも「協力する」関係であり、自由診療を行うこととなるが、患者とのトラブルを避ける意味でも労災の給付基準に照らして治療費の請求をするよう要望している(労災指定医における給付基準については下記参照)。

[参考]労災指定医における歯科医療費の給付基準
・単価…1点あたり12円(以下にある金額で定められているもの以外は原則として医療保険の診療報酬に準じる)
・初診料…3,820円(時間外、休日、深夜の加算は医療保険に準じる)
・救急医療管理加算…初診時 入院外 1,250円
・再診料…1,400円(時間外、休日、深夜の加算は医療保険に準じる)
・再診時療養指導管理料(1回につき)…920円
再診時に療養上の指導として食事指導、日常生活指導、機能回復訓練に対する指導などを行った場合、1回につき920円を算定する。カルテにその都度、指導内容の要点を記載する。
・上記以外については、医療保険の診療報酬に準じて給付されるが、特別な場合は、原則個別に判断される。

(1)愛知県では、前歯に保険適用外の材料を用いて補綴などを行う場合は、歯科医学的見地からその必要性が認められる場合に給付される。なお、前歯の歯根ハセツを伴う場合などはメタルボンドを含むブリッジも認められる。
 オールセラミック、ハイブリッドセラミック、メタルボンド…材料費について、1歯あたり原則8万円(患者の自己負担相当額)を上限とする。
(2)保険適用外の材料で前歯を修復する場合は、必要理由を添付(付記)して提出する。
(3)原則として金冠は認められない。また、自費のインプラントも認められない。
(4)広範囲顎骨支持型補綴は認められている。
(5)保険適用外の材料を用いた補綴などを破損した場合は、当該補綴を現状復帰するための費用は認められる。

3.治療費の請求方法
 非指定医で診療を行った場合、患者が労働基準監督署に上記の請求書と明細書で請求する。愛知労働局では、請求は、月ごとに行うことが望ましいとしているが、数カ月分をまとめて請求することもできる。その場合、請求書は数カ月分を1枚にまとめて記載できるが、明細書については月ごとに作成する。

4.その他
 労災収入は社保収入と分け、自由診療と同じ扱いとなる(ただし消費税は非課税)。

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