2020年歯科診療報酬改定情報(8)

 前回に続き現時点で明らかになっている改定内容について解説する。なお、今後、疑義解釈などが出され、解釈の変更などがありうる。

歯周病治療に新しい流れ 重症化予防治療の導入


 これまでの歯周病治療の流れの中に、新たに「歯周病重症化予防治療」が導入された。今回の改定の中では、最も大きなポイントの一つといえる。「予防」治療の保険導入ではなく、あくまでも「重症化」を予防していく処置として位置づけられている。
 歯周病の治療では、基本的に日本歯科医学会の「歯周病の治療に関する基本的考え方」、いわゆるガイドラインにもとづく治療が求められる。この治療が組み込まれたガイドラインが、3月31日に公表されたので確認いただきたい。

P重防の概要


 歯周病重症化予防治療(P重防)は、2回目以降の歯周病検査の結果、一時的に症状が改善傾向にある患者を対象とする。一時的な症状の改善傾向とは、4㎜未満のポケットを有し、部分的な歯肉の炎症またはプロービング時の出血が認められる状態を指す。
 対象患者に対し、歯周病の重症化予防を目的として、スケーリング、機械的歯面清掃処置などの継続的な治療を行う。病名は「P」または「G」で、点数は歯数によって決まる。2回目以降の算定は、前回実施日の翌月1日から起算して2月を経過した日以降(レセプト2枚空ける)となる。(表1・2)
 

 

P重防と他の歯周病治療の関係


 2回目の歯周病検査の結果、P重防を開始し、その後の歯周病検査で4㎜以上の歯周ポケットを認めた場合は、必要に応じて歯周基本治療(SRP、PCurなど)を行う。歯周基本治療などを行った結果、歯周ポケットが4㎜未満となった場合は、再びP重防に移行できる。
SRP、PCurを行った後にP重防を開始し、その後の歯周病検査で4㎜以上の歯周ポケットを認めた場合は、SPTを開始する。SPTにより歯周ポケットが4㎜未満となった場合は、再びP重防に移行できる。
 P重防からSPTに移行する場合は、P重防を行った月の翌月1日から起算して2月を経過した日以降にSPTを算定する。SPTからP重防に移行する場合も同様となる。(図)
 

P重防のカルテ記載、文書提供など


 P重防を開始する場合は、歯周病検査の要点やP重防の治療方針などについて管理計画書を作成し、文書により患者または家族に提供する必要がある。当該文書の写しは、カルテに添付する。その他、療養上必要な管理事項がある場合は、患者に説明し、要点をカルテに記載する。
 2回目以降のP重防では、必要に応じて歯周病検査を行い、症状の安定を確認する。また、必要に応じて文書を患者または家族に提供する。

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