歯科診療報酬改定情報(1)

 来年4月の診療報酬改定の議論が進んでいる。11月20日の社会保障審議会医療保険部会では、「平成28年度診療報酬改定の基本方針(骨子案)」について議論がされた。骨子案では、地域包括ケアシステム推進のための取組の強化として、「個別の疾患だけでなく、患者に応じた診療が行われるよう、かかりつけ医やかかりつけ歯科医の機能を評価」、重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点として、「口腔疾患の重症化予防・口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の推進」が盛り込まれている。
 具体的な改定内容の検討は中医協で行われており、10月以降は特に頻回で開催されている。従来のスケジュールでは、来年1月中旬に諮問、地方公聴会の開催やパブリックコメントの募集を経て、2月中旬に答申されることになる。

かかりつけ歯科医機能の評価を検討


 歯科医療に関しては、7月22日の中医協総会に厚労省から資料と課題・論点(その1)が示された。
 資料では“歯の形態回復を主体とした歯科医療機関完結型の歯科医療”から、“口腔機能の維持・回復の視点を含めた地域包括ケア(地域完結型医療)における歯科医療供給体制”を構築する方向性が示されている。
 「地域完結型医療(地域包括ケア)における歯科の対応」では、(1)周術期口腔機能管理等の医科歯科連携、(2)主治の歯科医師機能の評価、(3)全身的な疾患を有する患者等への対応の3項目があがっている。
 周術期口腔機能管理については、病院併設歯科での算定が大部分であり、歯科診療所での算定がない県も6県あること、算定病院が患者のかかりつけ歯科医と連携しているのは半数程度にとどまっている資料が出され、「チーム医療の推進や歯科医療の機能分化の観点から、周術期口腔機能管理における医療機関間(病院歯科と歯科診療所)の連携についてどう考えるか」との論点が示された。日歯の遠藤委員は病院歯科のマンパワー不足を指摘し、歯科のある病院への訪問が認められていないことへの制度上の工夫、慢性期・回復期・施設への移行時に歯科との関係が途切れないような連携の工夫の必要性について意見を述べている。
 他には、「主治の歯科医師の機能・役割をどう考えるか」の論点とともに、「歯科診療で特別な対応が必要な患者、全身的な疾患を有する患者等の対応に関する評価及び歯科外来環境の整備」の論点も示された。資料では、かかりつけ歯科医の歯科診療特別対応連携加算、歯科診療特別対応地域支援加算や歯科治療総合医療管理料の算定件数が少ないこと、歯科外来環境診療体制加算の施設基準の届出が約12%にとどまっていることが報告されている。
 支払側の白川委員(健保連)からは、「かかりつけ歯科医というだけで評価せず、然るべき基準に達した場合に評価すべき」と述べ、前回改定で主治医機能を評価した医科同様に厳しい算定要件の設定の要望が出された。

口腔疾患、口腔機能低下への対応


 「口腔疾患、口腔機能低下への対応」の(1)口腔機能に着目した評価では、先進医療に導入されている有床義歯補綴治療における総合的咬合・咀嚼機能検査、舌圧測定などが資料で出され、咀嚼機能を含む口腔機能の検査方法、管理の在り方の評価が十分ではないとし、「口腔機能の評価、および口腔機能の獲得・成長発育、維持・向上(回復)に着目した歯科治療についてどのような対応が考えられるか」との論点があがっている。
 また、(2)う蝕や歯周疾患の重症化予防の推進について、歯周病の重症化予防の観点で、現在は中等度以上の歯周病患者に限定されている歯周病安定期治療(SPT)、う蝕の重症化予防の観点では、初期う蝕において適切な早期診断と管理のもとで健全な状態に回復する可能性があるとの新たな考え方の資料も示されている。

歯科訪問診療の20分要件、在宅かかりつけ歯科診療所の施設基準を見直し


 11月11日の中医協では、在宅歯科医療について課題と論点が示された。歯科訪問診療の現状(進渉)に関する課題では、歯科訪問診療は約2割で行われ、そのうち約半数が歯科訪問診療1を算定し、歯科訪問診療2、3のみの医療機関が約1割と報告。複数の患者に行われる歯科訪問診療の質を確保する観点から、歯科訪問診療3の評価や取り扱い等についての対応を論点として挙げている。また、前回改定で新設された在宅かかりつけ歯科診療所の届出が約1.5%であることが報告され、その施設基準を見直しも提案された。
 歯科訪問診療料の20分以上の算定要件については、要介護度3~5において20分未満の割合が高い傾向を示し、同一建物で要介護度の高い1人の患者を診療する場合等、一定の条件を満たす場合に限り見直す考えが提案された。その他、歯科訪問診療で行う処置、歯冠修復・欠損補綴及び手術の一部の項目にかかる100分の50加算の見直し、病院等で開催されるカンファレンス等へ参加し歯科訪問診療を実施し、口腔機能管理等を行った場合の評価についても論点としてあがっている。

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