歯科診療報酬改定情報(2)

 来年4月の歯科診療報酬改定に向け議論をすすめている中医協総会では、11月20日に、「歯科医療について(その2)」の資料が出され、周術期口腔機能管理や「かかりつけ歯科医機能」など、改定される内容がより具体的に示された。

周術期口腔機能管理は病院との連携をさらに推進


 周術期口腔機能管理については、新たに歯科標榜のある病院と歯科標榜なしの病院での医科歯科連携の状況が資料で示され、現在歯科標榜のある病院に対して、他医療機関の歯科訪問診療料は算定できないことになっているが、院外の歯科医療機関との連携を推進する観点から、算定を可能とすることが検討されている。また、病院における歯科の受け入れ態勢を推進するために周術期口腔機能管理後手術加算を引き上げることも検討されている。
 その他、周術期口腔機能管理料Ⅲについては、放射線治療や化学療法以外の患者や、治療開始前の算定など対象者、対象期間の見直し、周術期専門的口腔衛生処置についても対象者の見直しが論点として挙げられている。
 全身的な疾患を有する患者等への対応では、歯科外来環境体制加算の施設基準の見直し、歯科治療総合医療管理料とバイタルサインをモ二タリングしながら行う歯科治療の評価、重度歯周病を有する糖尿病患者に対する局所抗菌剤を歯科治療に先行して投与することを認めることについて、検討項目に挙げられている。

「かかりつけ歯科医機能」には11要件を提示


 かかりつけ歯科医機能については、(1)患者個人ごとのニーズに対応した健康教育・相談機能、(2)必要とされる歯科医療への対応機能、(3)チーム医療実践のための連携および紹介または指示機能、(4)要介護高齢者・障害者に適切な歯科サービス提供のための機能、(5)福祉施設および在宅患者に対する歯科医療・訪問指導機能、(6)定期的なプロフェッショナルケアを基本とした予防管理機能が期待されるとし、条件案が提示された。
 具備すべき条件案(表)には、具体的に11の要件が示されているが、中医協で出された資料によれば、歯科訪問診療を行っている医療機関は全体の約20%、歯科外来環境体制加算の届出医療機関は約12%、在宅療養支援歯科診療所は約9%となっており、複数の常勤歯科医師あるいは常勤の歯科衛生士の配置などの条件も考慮すると、そのハードルは高いと言える。また、これらの条件を満たした場合に算定する新たな点数が設定されることになるが、新設点数が要件に見合う点数となるのか、厳しい算定制限が設けられるのかなども気にかかる。

根管治療、難抜歯、床裏装などの評価も見直し


 口腔機能に着目した評価では、現在先進医療に位置づけられている有床義歯補綴治療における総合的咬合・咀嚼機能検査の保険導入、舌接触補助床装着後の舌圧測定の評価、ホッツ床等を含む口蓋補綴、顎補綴を装着した際の管理や指導の評価が検討されている。
 また歯科固有の技術の評価では、根管治療について上顎第1大臼歯の約5割に4根管、下顎第2大臼歯の約3割に樋状根が認められること、マイクロスコープを用いて通常では見つけられにくい歯の内部を拡大して調べることができるようになっているとの資料が出され、「4根管」「樋状根」「マイクロスコープ」の評価も論点として挙げられている。その他では、環境汚染の防止を考慮し歯科用アマルガムの使用の中止、歯科疾患管理料の文書提供のあり方と評価、難抜歯における前歯・臼歯別の評価、同一初診に1回の算定となっている補綴時診断料の評価、実態に即した平行測定検査の評価なども検討されている。加えて、有床義歯内面適合法(床裏装)について、義歯を製作してから6カ月以内の算定が100分の50となる有床義歯修理の取扱いと一致していないことが提示され、整合性のとれるように見直しも項目に挙がっている。

保険導入、既存技術の評価も検討


 次期改定に向けて、各学会から提案された医療技術の評価についても、検討が行われている。10月30日の中医協診療報酬調査専門組織の医療技術評価分科会には、厚労省から医科歯科合わせ737件が「幅広い観点から評価が必要な技術」として提案された。
 歯科では、保険導入されていない新規技術として、前述の有床義歯機能検査、舌圧検査などの他、抜歯手術・埋伏歯(複雑・著しく複雑なもの)、閉塞性睡眠時無呼吸に対する口腔内装置の診断・調整のための内視鏡検査、小児の口唇閉鎖力検査、1月から保険適用となるファイバーポスト(間接法)とコンポジットレジンコア併用による支台築造などが含まれている。また既存技術では、根管治療の4根管加算や歯周病安定期治療などに加え、閉塞性睡眠時無呼吸に対する口腔内装置の修理(総義歯に準ずる)、大臼歯の歯冠修復4/5冠、大臼歯のCAD/CAM冠なども挙げられている。
 医療技術評価分科会では、評価対象を確定し委員による事前評価を受け、来年1月下旬には評価結果をまとめ、中協総会に報告することとなるが、これらのうちどのような技術が保険導入され、点数の見直しが行われるのか注目される。  

ページ
トップ