歯科診療報酬改定情報(1)

歯科診療報酬改定情報(1)

 2012年4月に予定されている診療報酬・介護報酬の同時改定に向けて、中医協での診療報酬改定に関わる議論が本格化している。現在までに確認されている改定のスケジュールでは、社会保障審議会の医療部会と医療保険部会が年内に「基本方針」を確定すること、改定率については内閣で12月に決定することとされている。
 中医協ではこれらの議論と並行する形で改定内容についての検討を進めており、9月末からは週1回以上のペースで総会を開き、課題ごとの検討を行っている。歯科については、11月前半に在宅歯科、11月後半に歯科医療についてそれぞれ検討を行うことが予定されている。今回の診療報酬改定は介護保険との同時改定ということもあり、在宅歯科関連が大きな柱のひとつになると思われる。これまでに検討が進められている中で歯科に関連する事項をまとめて紹介する。

歯科医療費の伸びは1・4%にとどまる

 10月5日に開催された総会では、2010年改定の歯科への影響率について、「平成22年度医療費の動向調査」の結果として、「一日あたり医療費の伸び」がプラス1・8%と報告されたことに対し、診療側委員からは、貴金属価格改定の影響がどの程度あるのか示してほしいとの要望が出された。この要望を受け、10月19日の総会では、「歯科用貴金属の告示価格の改定に伴う歯科医療費への影響について」との資料が提出された。この資料によると、価格改定に伴う影響率は2010年4月改定がマイナス0・1%、2010年10月改定がプラス0・9%であった。それぞれ6カ月間についての影響率であることから、2010年度全体では、プラス0・4%程度の影響があったと考えられる。
 このことから推察される実質的な歯科医療費の伸び率は、貴金属価格改定の影響を除くと1・4%で、改定時に厚労省が公称としていた改定率の2・09%に遠く及ばない結果であった。予想と実態のずれには様々な要因が考えられるが、厚労省の影響率予測が適切なものであったかどうかの検証も必要である。

歯科関連施設基準の届出状況

 同じく10月5日の総会では、2010年7月1日時点での施設基準の届出状況が示された。新設点数については、歯科技工加算が7178件で最も多く、在宅患者歯科治療総合医療管理料は1748件、手術時歯根面レーザー応用加算784件、障害者歯科医療連携加算447件であった。既存の施設基準では、歯科外来診療環境体制加算(08年2868件→10年4770件)、在宅療養支援歯科診療所(08年3039件→10年3996件)、歯周組織再生誘導手術(08年4936件→10年5966件)などの届出が増加している。これらはいずれも08年の改定で導入されたものであるため、改定直後には様子を見ていた医療機関が届出を行ったことが主な要因と考えられる。

明細書の無料発行義務化について

 10月12日には、明細書の無料発行義務化について検討が行われた。明細書の無料発行は歯科でも今年5月から電子レセプト請求を行っている医療機関について原則義務化されている。
 公益側委員や支払側委員からは「より推進すべき」との意見が相次いだ。公費負担医療などで、窓口負担がゼロの患者については、現在のところ明細書発行義務化の対象ではないが、医療費への理解を深めてもらうためにも義務化の対象とすべきとの意見も出された。
 一方で、「本来は保険者が行うべきものであるとの意見もある」「保険者も患者に対して明細書発行の意義を教育すべき」など、保険者への要望も出された。診療側委員からは義務化に反対する意見も出されたが、推進する方向で議論を進めることが確認されている。

改定の検証調査報告

 2010年改定の結果検証にかかわる調査についても、中医協に概要が報告されている。
 「歯科技工加算創設の影響調査」は、加算届出医療機関と患者を対象に調査を行った。患者調査では、理想とする義歯修理の期間は預けた翌日までが九割を超えているのに対し、歯科技工加算の認知度は低く、歯科医院選択の際の基準とまではなっていない。患者の満足度の高い歯科医療の推進にあたっては、院外技工であっても迅速に修理を行った場合の評価を行うなどにより患者にとっても医療機関にとっても分かりやすい制度としていく必要がある。
 「在宅歯科医療及び障害者歯科医療の実施状況調査」では「在宅歯科医療の実施状況調査(対象は医療機関と患者)」、「在宅歯科医療の実施意向調査(対象は医療機関)」、「障害者医療の実施状況調査(対象は医療機関と患者)」の3つの調査が行われた。歯科訪問診療の実施状況については、「実施している」(35・5%)、「今後実施したいと考えている」(5・2%)、「実施していたが今はしていない」(18・8%)、「全く実施していない」(39・9%)と多くの歯科医療機関で訪問診療に取り組みたいと考えている実態があきらかになった。一方で歯科訪問診療を行う際の課題としては、「歯科訪問診療の評価が低いこと」「保険請求、介護保険の確認事項等事務処理に困難があること」「歯科訪問診療に当たっての装置・器具の準備と後片付けに時間がかかること」などがあげられている。
 在宅歯科医療の推進には、訪問診療の評価引き上げや、利用しやすい制度の整備などが欠かせない。

 協会では、今後も診療報酬改定に関する情報を新聞などで随時お知らせする予定。

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