生活習慣病・感染症対策に関わる2つのアンケートの結果報告(医科)


 全国保険医団体連合会(保団連)は2025年3月から4月にかけて「生活習慣病の医学管理の評価に関する改定影響アンケート」(以下、生活習慣病アンケート)と「感染症対策に関する診療報酬上の評価に係るアンケート」(以下、感染症対策アンケート)の2つのアンケートを、医科開業医会員を対象に実施した。以下、愛知県での集計結果について紹介する(回答の割合の表記は小数点以下を四捨五入)。

【生活習慣病アンケート】
 全国で5,070件、愛知県では310件の回答があった。回答した医療機関の区分は、無床診療所が271件(87%)、有床診療所が17件(6%)、病院が18件(6%)で、全体の63%が内科を標榜する医療機関であった。生活習慣病管理料を算定していると回答した医療機関は全体の75%で、内科や外科を標榜する医療機関ではほとんどが算定していた。整形外科、小児科でも算定している医療機関が見られ、耳鼻咽喉科、皮膚科、眼科では算定している医療機関はなかった。

過半数の医療機関が療養計画書は役立っていないと回答
生活習慣病管理料を算定している医療機関に対し「療養計画書は生活習慣病管理の質を上げるために役立っているか」との問に、「役立っている」「少し役立っている」と回答した医療機関は合わせて42%だったのに対し、「あまり役立っていない」「全く役立っていない」との回答は56%という結果となった(図1)。その理由として次のような声が寄せられた。


○役立っている・少し役立っていると回答
・指導内容等が目に見えるため口頭より患者の意識も高まっており、それが定期的に医師と確認をすることで生活習慣の見直しにつながっていると感じる。
・目標値を患者に意識させることができる。
・一回目は役立っていると思うが二回目以降は変化がないことが多い。
○あまり役立っていない・全く役立っていないと回答
・初回時は説明をしっかり受けて生活習慣の改善に前向きな患者も見られたが、継続の方はあまり興味を持たない患者が多かった。
・今までの指導内容を文書化しただけで、手間がかかり時間の無駄。
・患者の待ち時間が長くなり、診察時に怒っている患者がいる。
・ペーパーレスの時代にコスト的にも負担になっている。
「少し役立っている」を選択した医療機関でも、その理由の記載欄では、時間や手間がかかるなどデメリットの記載をした医療機関が複数見受けられた。

6割超が管理料の包括範囲が広すぎると感じる
 生活習慣病管理料の包括範囲で不合理と感じる点数についての設問では、外来管理加算(管理料算定日)が一番多く(62%)、次いで特定疾患処方管理加算(50%)、傷病手当金意見書交付料(43%)と続いた(図2)。また、生活習慣病管理料の包括範囲について66%が広すぎると回答し、包括された点数が持ち出しとなることを懸念するという回答は37%であった。
 政府に望む対応としては図3の通り、高血圧症・糖尿病・脂質異常症の「3疾病を特定疾患療養管理料や特定疾患処方管理加算の対象に戻す」(54%)や「生活習慣病管理料算定日でも外来管理加算を算定できる」(51%)の声が多く寄せられた。その他政府に望む対応として、「(Ⅰ)を廃止し(Ⅱ)の点数を引き上げる」や「生活習慣病管理料を月2回は算定できるように」などの意見が寄せられた。

アンケートに寄せられた意見
 以下、自由記載欄に寄せられた意見として主なものを紹介する。
●生活習慣病管理料(Ⅰ)の算定月でも生活習慣病に関係のない検査(泌尿器や整形外科領域など)は算定できるようにすべき。
●3疾患が特定疾患から除外されたことで200~300万円/1カ月の減収となった。経営を圧迫し、スタッフの給料を上げられない。
●患者が療養計画書へのサインを拒んだ場合に点数がとれなくなるのはおかしい。
●療養計画書の作成ができず算定をやめました。
●コロナ禍に発熱外来を担った内科系医療機関が増収だったからといって、内科医療機関を狙い撃ちした改定は断固反対。今からでも間違いを認めて元に戻すべきだ。
【感染症対策アンケート】
 全国で4,904件、愛知県では296件の回答があった。
 回答した医療機関の区分は無床診療所が266件(90%)、有床診療所が13件(4%)、病院が16件(5%)だった。診療科は内科(61%)、小児科(7%)、整形外科(7%)、耳鼻咽喉科(6%)の順に多かった。
 発熱患者に対応している医療機関は限定対応も含めて、83%であった(図4)。診療科は内科・小児科・耳鼻咽喉科が多く、整形外科・泌尿器科・外科・精神科でも対応しているところがあった。

7割近くが発熱患者対応の評価に不満
 発熱外来など感染症が疑われる患者に対する診療に対し、診療報酬での評価について、「全く評価されていない」「あまり評価されていない」の合計は68%、「評価されている」「ある程度評価されている」の合計は10%、「どちらでもない」は16%だった(図5)


 評価されていないと回答した理由は、「物品代の高騰に見合わない(71%)」「スタッフ増員・手当増額に要する費用に見合わない(72%)」との意見が多数を占めた。その他、「外来感染対策向上加算・発熱患者等対応加算の施設基準が厳しく算定できていない」「発熱患者の対応に時間がかかり、通常診療での診療報酬が減ってしまう」「発熱患者を受け入れていると高齢者が感染を恐れ受診しなくなる」などの声が寄せられた。
 評価されていると回答した理由は、「発熱患者等対応加算が新設されたから」との声が多かった。

加算・検査点数の改善を望む声が多数
改善に向けて必要な診療報酬上の措置については、図6の通り、「発熱患者等対応加算の点数を引き上げる(67%)」「発熱患者等対応加算を診療の都度算定できるようにする(53%)」「外来感染対策向上加算等の点数を引き上げる(52%)」「各種汎用の感染症検査点数を引き上げる(50%)」などの要望が多かった。

アンケートに寄せられた意見
以下、自由記載欄に寄せられた意見として主なものを紹介する。
●外来感染対策向上加算の施設基準が厳しすぎる。見直してほしい。
●届出医療機関ではなくても発熱患者を診れば対応加算を算定できる様にすべき。
●特に小児科は、感染症患者は避けることはできず、自分の身の危険をおかして、診療している。加算点数を引き上げてほしい。
●以前のように院内トリアージ料と同じ点数で算定できるようにしてほしい。
●発熱患者一人に対応する時間が長いため、対応加算の引き上げが必要。
●何種類かのキットで検査をするとかかりつけ診療料等包括点数ではカバーできない。
●スタッフの肉体的、精神的負担に見合った報酬が全く足りない。ベースアップ評価料より、感染対策の点数を上げてほしい。
●プレハブ等設置する補助はあったが、メンテナンスにもお金がかかる。換気のため、冷暖房の電気代も負担となっている。
●発熱外来の点数を増やすことで発熱外来を行う診療所を増やしてほしい。
●これだけ診療報酬を下げられて、やる気が全くわかない。地域医療を崩壊させる改正ばかり。
●コロナ疑いやインフルエンザ疑いの患者を診療しても小児抗菌薬適正使用支援加算をとれるようにしてほしい。
●診療報酬引き上げしかない。
●診療報酬体系をもっとシンプルにしてほしい。

 保険医協会ではこのアンケート結果をもとに、診療報酬改善に係る要望書を作成し、首相、厚生労働大臣はじめ、地元選出国会議員などに提出する予定である。アンケートにご協力をいただきありがとうございました。

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