健保だより 10月以降の長期収載品に係る選定療養の取扱い

【医科・歯科共通】
10月以降の長期収載品に係る選定療養の取扱い

 10月1日から長期収載品(後発医薬品のある先発医薬品)の処方・調剤に選定療養の仕組みが導入され、薬剤料(投薬、注射、在宅にかかるもの)において患者の負担増となる場合が生じる。先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の料金を「特別の料金」とし、先発医薬品の処方を希望する患者に対し、この「特別の料金」を一部負担金とは別に負担させる制度である。
「特別の料金」については課税対象であることから、消費税分を加えて患者負担とすることに注意が必要である。なお、薬剤料以外の費用(診療・調剤の費用)はこれまでと変更はない。また、入院患者はこの制度の対象外とされている。以下、制度について紹介する。
1.選定療養の対象となる医薬品(長期収載品)
 長期収載品とは後発医薬品のある先発医薬品をいう。選定療養の扱いとなり得る具体的な対象医薬品は厚労省ホームページの厚労省マスタで閲覧することができる。(1095品目)

2.計算方法                           
 患者から選定療養として一部の金額を自費で徴収する場合、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1相当の額(特別の料金)を除いた保険対象の薬剤料(B)に、数量等を踏まえた薬剤料の患者の負担割合に応じた負担金額(C)と、先発医薬品と後発医薬品の価格差の4分の1の費用の数量等を踏まえた薬剤料に消費税分を加えたもの(A)の合計を、患者から徴収する。
 計算事例や解説は、厚労省ホームページから「選定療養における費用の計算方法について」を参照されたい。

3.医療機関の留意点
【院外処方の場合】
・医療機関で徴収することはなく、該当する場合は、保険薬局で徴収することとなる。
・長期収載品を銘柄名処方する場合、その薬剤について処方箋の「変更不可(医療上必要)」欄に「?」又は「×」が記載されたものは、これまで同様、保険給付の対象となる。
・患者の希望を踏まえ銘柄名処方され、処方箋の「患者希望」欄に「?」又は「×」を記載された長期収載品については、選定療養の対象となる。
・銘柄名処方された長期収載品で、処方箋の「変更不可(医療上必要)」欄及び「患者希望」欄のいずれにも「?」又は「×」の記載がない場合には、保険薬局における調剤の段階で後発医薬品を調剤することができる。この場合患者が長期収載品を薬局で希望すると選定療養の対象となる。
・医師が後発医薬品でも差し支えないと判断し、長期収載品への患者の希望がない場合には、一般名処方が望ましい。また、一般名処方を行う場合は「変更不可(医療上必要)」欄及び「患者希望」欄のいずれにも「?」又は「×」を記載しない。
※当分の間、改定前の処方箋の様式を手書き等で修正することが可能である。
【院内処方の場合】
・長期収載品に係る選定療養の趣旨及び特別の料金について院内の見やすい場所に患者にとって分かりやすく掲示しておかなければならない。
・上記の掲示事項について、原則としてウェブサイトに掲載しなければならない。ただし、自ら管理するホームページ等を有しない医療機関はこの限りでない。なお、ウェブサイトへの掲載について、令和7年5月31日までの間、経過措置が設けられている。
・本制度に係る特別の料金を徴収した場合、患者に対し、保険外併用療養費の一部負担に係る徴収額と特別の料金に相当する自費負担に係る徴収額を明確に区分した領収書を交付する。

4.選定療養の対象とならない場合
以下(1)~(5)のいずれかに該当する場合は、従来通り保険給付となる。
(1)長期収載品と後発医薬品で薬事上承認された効能・効果に差異がある場合(※)であって、長期収載品を処方する医療上の必要があると医師が判断する場合。〔レセプトコメント用コード:820101320〕
※効能・効果の差異に関する情報が掲載されているサイトの一例
PMDAの添付文書検索サイト
日本ジェネリック製薬協会が公開する「効能効果、用法用量等に違いのある後発医薬品リスト」
(2)患者が後発医薬品を使用した際に、副作用や、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、先発医薬品との間で治療効果に差異があったと医師が判断する場合であって、安全性の観点等から長期収載品の処方等をする医療上の必要があると判断する場合。〔レセプトコメント用コード:820101321〕
(3)学会が作成しているガイドラインにおいて、長期収載品を使用している患者について後発医薬品へ切り替えないことが推奨されており、それを踏まえ、医師が長期収載品を処方等する医療上の必要があると判断する場合。〔レセプトコメント用コード:820101322〕
(4)後発医薬品の剤形では飲みにくい、吸湿性により一包化ができないなど、剤形上の違いにより、長期収載品を処方等をする医療上の必要があると判断する場合。ただし、単に剤形の好みによって長期収載品を選択することは含まれない。〔レセプトコメント用コード:820101323〕
(5)後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、後発医薬品を提供することが困難な場合。〔レセプトコメント用コード:820101324〕
※出荷停止、出荷調整等の安定供給に支障が生じている品目かどうかでなく、現に後発医薬品を提供することが困難かどうかで判断する。
※院内採用品に後発医薬品がない場合は、「後発医薬品を提供することが困難な場合」に該当する。

すでに疑義解釈(その1)(その2)も示されている。長期収載医薬品の選定療養についての詳細は厚労省ホームページを参照されたい。

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