歯科診療報酬改定情報(7)

 今次歯科診療報酬改定は、当面3年間の社会保障費の自然増を、毎年5,000億円程度に抑えるという方針のもとで、初年度は1,700億円の削減を行うための財源捻出のため、全体でマイナス1.43%となった。歯科本体の改定率はプラス0.61%であるが、厳しい歯科医院経営の状態を改善させるには程遠いと言わざるを得ない。
 2月10日の中医協で答申された改定内容をみると、歯科医療機関完結型から地域完結型の歯科医療(地域包括ケアシステム)を推進する改定が行われている。
 具体的には、かかりつけ歯科医機能の評価として、「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(表1)が設けられ、7項目の施設基準を満たすことが要件とされている。中医協の資料によれば、歯科訪問診療を行っている医療機関は全体の約2割、歯科外来環境体制加算の届出医療機関、在宅療養支援歯科診療所は1割前後であり、歯科医師の複数名配置または歯科衛生士の配置などの条件も考慮すると、要件を満たす歯科医療機関は限られる。歯科医療機関の診療形態や地域的な事情で施設基準が整わない歯科診療所との選別で、医療機関の差別化、機能分化が強められる可能性がある。
 また「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」が算定する点数としては、エナメル質初期う蝕や歯周病治療終了後の病状安定期における患者への定期的・継続的管理の点数が新設されている。点数は比較的高く設定されているが、表1にあるように処置や検査が含まれ別に算定できないとされており、包括管理拡大の流れが強まったと言える。
 初診料の算定制限などが示されるのかも気になるところだ。

在宅歯科医療を専門に行う診療所の要件を明示

 今回の改定では、在宅専門の歯科診療所の保険医療機関の開設が認められる。その要件は表2のとおりであるが、保険医療機関の開設については、外来応需の体制を有していることが原則であることを明確化した上で、例外として7つの要件を満たした場合に開設が認められる。また新たに、在宅専門の歯科医療機関の在宅療養支援歯科診療所の施設基準が設けられる。この歯援診の要件を満たさない場合は歯科訪問診療料の算定ができず、歯科初診料相当の234点、歯科再診料相当の45点の算定となり、在宅患者等急性歯科疾患対応加算の算定もできないこととされている。

協会・保団連の要望が一定反映した項目も

 改定項目の中には、協会・保団連が要望してきた項目が一定反映されたものもある。歯科疾患管理料の患者への文書提供については算定要件から外され、文書を提供した場合は加算点数を算定することとなった。
 また、補綴時診断料の算定単位が、同一初診1回から1装置単位に変更される。
 在宅医療では、「著しく歯科診療が困難な者」で20分以上の診療が困難な場合は、20分未満でも歯科訪問診療1を算定できること、同居する同一世帯の複数患者に訪問診療を行った場合の1人目については、歯科訪問診療1が算定できることなどが挙げられる。
 新規技術については、1月から保険適用されているファイバーポストに加え、歯冠補綴時色調採得検査や舌圧検査、有床義歯咀嚼機能検査が保険導入される。
 加えて、ブリッジの支台歯でのレジン前装金属冠の第1小臼歯への適用拡大、硬質レジンジャケット冠とCAD/CAM冠の大臼歯への適用拡大も行われている。その他、う蝕重症化予防に関連する処置や歯内療法、有床義歯、歯科技工加算などの補綴関連点数もわずかに引き上げられているなど、評価できる項目もある。
 しかし算定要件や対象が限定されている項目もあり、留意が必要だ。
 例えば、4根管や樋状根に対する加圧根管充填処置への加算点数が新設されたが、マイクロスコープと歯科用CTの撮影が要件であり、施設基準の届出が必要である。硬質レジンジャケット冠とCAD/CAM冠の大臼歯への適用拡大は、歯科用金属を原因とする金属アレルギーを有する患者で、医科からの診療情報提供に基づく場合に限られる。先程も述べたが、レジン前装金属冠の第1小臼歯への適用拡大は、ブリッジの支台歯のみが対象となる。また、舌圧検査は舌接触補助床を装着した患者に対して算定することとなっている。
 全体として、限られた改定財源の中で、初・再診料の引き上げや基礎的技術料の抜本的引き上げは行われず、技術料引き上げの恩恵は小幅に留まると言える。
 歯科医療費の総枠拡大なくして、歯科医療の抜本的な改善はない。
 

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