レセプト電子請求における審査の留意点

 この4月から、手書きでレセプトを請求している医療機関、高齢理由により既に届出を行い電子請求が免除されている医療機関を除き、レセプト電子請求が原則義務化された。2015年1月31日現在(2014年12月診療分)、歯科医療機関でレセプト電子請求を行っているのは、愛知では2,965医療機関(77.6%)である。
 レセプト電子請求に合わせ、審査支払機関では2012年の3月審査分から、電子レセプトを対象とした縦覧点検・突合点検が行われている。薬剤使用が多い医科では、突合点検による査定(減点)が多くなっているが、歯科では査定全体のうち、縦覧点検によるものが約20%、突合点検によるものが約1%と、縦覧点検による査定率が高くなっている。

縦覧点検による審査

 縦覧点検では、患者ごとに過去6カ月分のレセプトデータを蓄積し時系列に並べ、診療報酬の算定要件に合致しているかどうかをチェックしている。算定間隔の制限がされている処置や患者1人につき1回と定められている請求など、算定回数や算定日にかかわる要件がチェックされる。
 例えば、初診から2カ月を超えて算定した1回目の歯科疾患管理料(歯管)、連続した月の機械的歯面清掃処置(歯清)の算定、再SRP後のSRPの算定、歯周病安定期治療(SPT)開始後のP処・P基処・歯周基本治療の算定など、単月審査では「摘要」欄記載でしか確認できなかった前月・前々月などの過去の算定状況が、容易に確認できるようになっている。
 なお、6カ月を越える算定ルールがある補管などについては、当該行為のみ抽出して患者単位に蓄積して審査が行われる。

突合点検による審査

 突合点検は、歯科医療機関の電子レセプトと調剤薬局の電子レセプトを突き合わせして、薬の適応傷病名の記載漏れや、投与量の妥当性などがチェックされる。薬剤によって適応症や用法が異なるため、例えば切開や抜歯等の手術が伴わない場合には適応とならない消炎・鎮痛剤や、投与量や投与日数が規定されている抗生剤などの請求には注意が必要となる。
 突合点検の結果、調剤が不適切な場合は薬局への支払額から、医療機関のレセプトや処方せんが不適切と判断された場合には、医療機関への支払額から差し引かれることになる。審査支払機関から医療機関に「突合点検結果連絡書」が送られ、医療機関からの申し出がない場合には、翌月の医療機関への支払分から差し引かれる。

算定日情報による審査

 レセプト電子請求については2012年4月診療分以降、請求項目ごとの算定日情報の記録が義務付けられている。つまり、所見のないカルテとも言える情報が、審査支払機関に送られていることになり、受診した日にどのような検査や処置などが行われたかがわかるようになっている。以前は確認できなかった請求内容についても、算定要件に則った請求かどうか、算定項目の順序が妥当かどうか、同日に併算定できない項目の算定がないか、などのチェックが行われている。
 算定日情報による請求上の誤りが指摘される事例では、例えば、歯管と同日でないフッ化物洗口指導加算の算定、初回歯管算定前の歯清の算定、歯周病検査の算定前の歯管の算定、歯冠形成前のTeCの算定、SPT算定と同日の歯清の算定、歯冠形成と同日の知覚過敏処置の算定、支台築造と同日のう蝕処置の算定、P処と同日に行ったスケーリングの算定、などがある(愛知保険医新聞3月5日号・7面参照)。

算定ルールに精通することが必要

 さらに電子請求により、審査側ではそれぞれの医療機関でどのような点数が何回請求されているかなどの情報も、容易に得ることができるため、算定頻度や傾向的な請求などがチェックできるようになっている。また今後の運用によっては、算定日情報をもとに歯科医学的な判断が必要な事項にまで対象が拡大されていくことも考えられる。例えば、スケーリングやSRP後の短期間に行われる歯周病検査や、同じ部位に繰り返し行われる歯周外科治療など、治療の流れに妥当性があるかどうかの審査が行われる可能性もある。
 歯科では請求に際しての算定要件も多く、治療の経過が重視されるため、縦覧点検・突合点検、算定日情報による審査で、4月以降は減点・返戻がかなり増加していくことが考えられる。歯科医療機関では、診療報酬の算定について今まで以上に理解を深め、実際の保険請求に際しては、告示や通知の算定要件に則った請求を行うことがますます重要となる。また、審査支払機関の返戻・減点に対して、どのような理由なのかを把握して、以後の請求に反映させることが大切となる。

縦覧点検のチェック内容

区 分 チェック内容
算定ルールチェック 一定期間内における算定回数(3カ月に1回を限度として算定できる診療行為が3カ月に2回算定されていないか)等の適否
医薬品チェック 投与量が妥当か、投与日数が制限を超えていないか
診療行為チェック 実施回数(特定の診療行為が過剰に算定されていないか)
過去の査定履歴に
照らしたチェック
過去の査定事例と同じ請求が同一患者について行われていないか

突合点検のチェック内容

区 分 チェック内容
算定ルールチェック レセプトに記載されている処方せん料の請求と調剤レセプトに記載されている医薬品の品目数の適否等
医薬品チェック 調剤レセに記載されている医薬品に対する適応傷病名が医療機関のレセプトに記載されているか
調剤レセに記載されている医薬品の投与量が、医療機関のレセプトに記載されている傷病名に対して妥当か
調剤レセに記載されている医薬品の投与日数が制限を超えていないか
調剤レセに記載されている医薬品の禁忌病名が医療機関のレセプトに記載されていないか
調剤レセに記載されている医薬品の中に併用禁忌、併用注意に該当するものはないか

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