周術期の口腔機能管理に関わる留意事項

周術期の口腔機能管理に関わる留意事項

 2012年の診療報酬改定で「周術期の口腔機能管理」が保険導入された。これは、がん患者等の手術前後に口腔管理を行うことで術後合併症などのリスクを減らすことを目的としたもので、手術前後や放射線治療中などに歯科診療所でも行うことが想定されている。今回は、歯科診療所での代表的な算定方法に絞って紹介する。なお、各項目の詳細やレセプト記載、病院での算定方法などについては「歯科保険診療の要点2012年8月版」P.63~に解説が掲載されているので参照いただきたい。

[対象者]

(1)全身麻酔下で頭頸部領域、呼吸器領域、消化器領域などの悪性腫瘍の手術を行う患者
(2)全身麻酔下で臓器移植手術、心臓血管外科手術などを行う患者
(3)放射線治療や化学療法を行う患者 など
※以下、文中の「手術などを担当する医療機関」とは上記の治療を行う医療機関をいう。

 

[周術期口腔機能管理の流れ]

歯科診療所で行う周術期の口腔機能管理は、大きく分けて2通りの流れが考えられる。

[周術期口腔機能管理計画策定料(周計)300点]

(1)歯科診療所の場合、下記の2つの要件をすべて満たした場合に、一連の治療を通じて1回に限り300点を算定する。
 a)手術などを実施する保険医療機関からの文書による依頼を受け、患者ま
   たはその家族の同意を得た上で周術期の口腔機能の評価および一連の
   管理計画を作成する。
 b)作成した管理計画を文書で患者またはその家族に提供する。
(2)患者に提供する管理計画書の内容は以下の通り。カルテには管理計画書の内容を記載するか、写しを添付する。
 a)基礎疾患の状態・生活習慣
 b)主病の手術等の予定
 c)口腔内の状態等(現症および手術等によって予測される変化等)
 d)周術期の口腔機能管理において実施する内容
 e)主病の手術などに係る患者の日常的なセルフケアに関する指導方針
 f)その他必要な内容
 g)保険医療機関名およびその管理の担当歯科医師名 など
(3)同一の患者について、手術などを行う保険医療機関と、連携して口腔機能管理を行う保険医療機関の双方で周計を算定することはできない。どちらか一方の保険医療機関で算定する。

[周術期口腔機能管理料Ⅰ(周管Ⅰ)190点]

(1)周管Ⅰは、患者の術前から術後における歯科医師の包括的な口腔機能管理を評価したもの。
(2)周計で作成した管理計画に基づき、歯科医師が口腔機能の管理を行い、その管理内容を患者に文書(管理報告書)で提供した場合に手術前は1回、手術後は手術を行った月から起算して3月以内に計3回に限り190点を算定する(一連の管理を通して計4回の算定となる)。
(3)周管Ⅰを算定できるのは以下の場合。
 a)手術を実施する病院への入院前と退院後に口腔機能の管理を行う場合
 b)歯科のない病院で手術を実施する入院中の患者に、他の保険医療機関
   の歯科医師が訪問診療に赴き、口腔機能の管理を行う場合
(4)患者に提供する管理報告書の内容は以下の通り。
 a)口腔内の状態の評価
 b)具体的な実施内容や指導内容
 c)その他必要な内容
(5)カルテに管理報告書の内容を記載するか、写しを添付する。なお、患者の状態に変化が生じた場合は、必要な管理計画の修正を行い、管理報告書にその内容を記載し患者に提供する。
(6)管理計画を策定する保険医療機関と実際に口腔機能の管理を行う保険医療機関が異なる場合は、管理計画を策定した医療機関から、管理計画書の提供を受ける必要がある。その際にはカルテに管理計画書やその写しを添付するとともに、計画書の内容以外に必要な管理事項がある場合はその要点も記載する。
(7)周計と周管Ⅰは同日に算定することができる。
(8)同月に歯管、歯在管、在歯管、周管Ⅲ、医管、特疾管、がん連携指導料、がん治療連携管理料、歯科矯正管理料は併算定できない。ただし、手術前にこれらの管理料を算定し、手術後に周管Ⅰを算定する場合は別に算定できる。
(9)周術期の口腔機能の管理を行うにあたっては、一連の管理中において、患者の主治の医師と連携し、また入院中においては、主治の医師や看護師などとの間で実施内容や注意事項などの情報共有に努める。

[周術期口腔機能管理料Ⅲ(周管Ⅲ)190点]

(1)周管Ⅲは、放射線治療または化学療法の治療期間中の患者に対しての口腔機能管理を評価したもの。
(2)周計で作成した管理計画に基づき、歯科医師が口腔機能の管理を行い、その管理内容を患者に文書(管理報告書)で提供した場合に放射線治療等を開始した月から、月1回に限り算定する。
(3)患者に提供する管理報告書の内容は周管Ⅰと同様。管理報告書は口腔機能管理を行った場合に提供するが、患者の状態に大きな変化がない場合は、少なくとも前回の管理報告書提供日から起算して3月を超える日までに1回以上提供する。
(4)同月に周管Ⅰ、周管Ⅱ、歯管、歯在管、在歯管、医管、特疾管、がん連携指導料、がん治療連携管理料、歯科矯正管理料は併算定できない。
(5)周術期の口腔機能の管理を行うにあたっては、一連の管理中において、患者の主治の医師と連携し、また入院中においては、主治の医師や看護師などとの間で実施内容や注意事項などの情報共有に努める。

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